「あのさぁ椿ぃ、俺病気なんだわ」
監督の口から出た言葉に俺は頭が真っ白になった。

***


「練習終わったら話あっから残っとけよ」
練習前に監督からそう言われて俺はずっと悪い予感しかしていなかった。
何故なら昨日の試合で俺は決定的なチャンスでミスをし、そのまま試合終了でETUは負け、オマケにおれにはイエローカードのプレゼントが。

それ以外にも反省会の材料なら他にもたくさんあるわけで。
練習中もため息ばかりでザキさんに怒られる始末。
(なんでお前がため息吐いてんだよ、こっちが吐きたいぐらいなんだけど)(…スミマセン)

しかし心のどこかで喜んでいる自分もいた。
監督と一緒にいられることが、例え反省会であっても、幸せだと最近感じている自分にとっては。

***


練習後に会議室に入ると既に監督は椅子に座って待っていた。
「す、スミマセン待たせてしまって」
「イヤ、そんなに待ってないよ」
ホッと胸をなで下ろし椅子に座る。
「あの、話って…?」
自分から反省会を望むような感じだが、そこは気にせず話を切り出してみた。
すると監督は至極真面目な顔で口を開いた。
「あのさぁ椿ぃ、俺病気なんだわ」

しばらく俺は何も考えられなかった。
(え、監督が病気?どんな?いつから?もしかして命に関わるものなのか…)
思考が戻ってきたら戻ってきたで頭の中をぐるぐると色んなものが回っている。

「そ、それってどんな…?」
やっと出てきた言葉は小さくて震えていた。
「ンとね、心臓が急に速くなったり、体がスゴく熱くなったり、何かモヤモヤしたり、って感じかな」

いつもの調子で話す監督に驚いた。
(なんでこの人はこんなにもフツーなんだ!?)
「じゃ、じゃあそれって誰かに言いました?病院行きました?」
俺は相当パニックに陥っているらしく、慌てて質問をした。
「いやぁ、お前が最初だよ椿。それにこれは病院に行っても治らないの」
監督は全く慌てずいつも通りに答えた。
「そんな…」

俺はふと最悪の事を考えた。
(監督の病気が治らない、ってことは辞めちゃうのかな…、嫌だな、もっと一緒にサッカーしていたい、もっと、一緒にいたい…!)
「でもな、まだ助かる方法があるんだ」
俯いていた俺は声の方に顔を向ける。
「ど、どんな?」
「それはなぁ、お前だよ椿」
「へっ?」

監督の言葉の意味が分からない。
(どうして俺…?そりゃ監督の為なら何でもするけど、でも、なんで俺…?)
「どう、して俺…なんスか?」
「お前が原因だから、って言ったらどうする」
イタズラが成功した子供のような顔で発せられた言葉に、俺はまだ頭に疑問符を浮かべていた。

「分かんないかぁ、…俺さ、椿のことが好きなんだよ」
「…え、えぇっ!?」
俺はびっくりして椅子から落ちてしまった。
(監督は俺が好き…!?えっ、えっ!?)

また頭がぐるぐるしてきた俺を監督はじっと見つめながら話し始めた。
「気づいたら目で追ってた。椿のこと見てたらドキドキするし、誰かと話してたらイライラするし、でも椿のこと考えてたら胸がキュンってなって温かくなるんだ、…な、これって病気だろ」

少し笑いながら吐き出された言葉達に
俺はやっと心の中にある、自分の気持ちに気付いた。
「監督っ!俺も、…俺も好きです」
「えっ?」
「俺も監督と同じ症状なんっス。気付いたら監督のこと見てるし、考えてるし…、心臓が破裂しそうなぐらいうるさい時とか、スゴく顔が熱い時があるんス、…ほら、俺も病気でしょ」

恥ずかしいけれど監督を見ながら自分の気持ちを伝えると、監督はマヌケな顔して、急に顔を赤らめて、すぐにいつも通りの顔になって
「なんだ、俺達両思いだったんだな」
とスラッと言ってのけた。

俺は監督をまともに見れなくなり下を向いていると、
スッと手が伸びてきた。

「これからもよろしくな、椿」
「…ぅ、ウス!」
監督の手を握ると急に体温が上がり心臓が速まった。
俺はまだまだこの病気は治りそうにないなと思い、手を繋ぎながら会議室を後にした。


(あとがき)
どうも!色んなサイト様にお邪魔してますやま蘭です^^
今回はこんな偽者タッツミーとバッキーのお話を読んで頂きありがとうございます、そしてスミマセンでしたm(_ _)m
無駄に長くて目が疲れますよね、本当に申し訳ないです。

皆さんが生温い目で見て下さった事を期待しております(^O^)
不快な気分になられた方は他の方の素敵なタッツミーとバッキーを見たり読んで心を落ち着かせて下さい。

このような素敵な企画を主催して下さった千早さん、本当にありがとうございます!
ゴミみたいな作品ですが参加させて貰えてよかったです。
それでは。