睡「こんな時間になるまで花で遊んでたのかよ」

「え…こんな時間って………」


睡骨の言葉を聞いて首を傾げるも、見上げると空はもう茜色に染まっていた


「もう夕方…」

睡「ったく仕方ねぇな…」


睡骨は薬草が入った籠を持ち上げると名前に背を向けて歩き出す


その後ろ姿はまるで夢で見たあの日と全く同じで…

少し複雑な思いを抱えたまま名前もまたその後についていこうと立ち上がった




しかしその時突然睡骨の足が止まり、追いかけていた名前はその背中にぶつかりそうになる


「睡兄?」


心配して声をかける名前だったが睡骨は振り向かない

ただそのままの体勢で少しずつ話し始めた


睡「もしも…もしもなんだが…






俺がお前のこと…

好きだって言ったらどうする?」


突然の予想にもしない言葉に名前は目を見開く


睡「妹としてじゃなく女として…」


消え入りそうなほど自信なさげな声で呟く睡骨

名前はしばらく言葉を発するのも忘れ、睡骨の背中を見つめていた


睡「困るよな…わりぃ、忘れてくれ」

しばらくの沈黙の後、そう言うと睡骨は再びゆっくりと歩き出す



どんどん離れていく大好きな人の背中――




睡兄…



そう言葉に出して呼びとめるよりも先に足が動いていた


睡骨に追いつくとそのまま背中に抱きつく


睡「名前!?」


驚きの声をあげる睡骨に名前は震える声でポツリと呟いた

「あたしも…聞いていい?」

睡「え…」

「もしも……もしもあたしが睡兄を好きだって言ったら…




睡兄は……」




もはや堪え切れていない涙声で必死に紡ぐ言葉――

しかしその言葉の続きを待たずに睡骨が持っていた籠が地面に落ちる

その時のドサッという音とほぼ同時に名前の体は優しい腕に包まれた

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