1059 | ナノ

微睡む

『お呼びですか?半兵衛殿』

日の当たる縁側で庭を眺めながら座っていた半兵衛殿

『やっと来たね、さぁ、ここに座って』
半兵衛殿は自分の隣をぽんぽん軽く叩きながら円らな瞳を私に向けた

言われた通りに座ってみれば当然のように私の太ももに頭をのせてきた半兵衛殿

『膝枕ってなんでこんなに気持ちいいかなぁ〜』
彼は呟きながら目を閉じた


『あの…、いいんですか?寝てたりして…。』

『い〜んじゃない?龍興さまもお酒のんで女の人と遊んでる訳だし…?』
目を閉じたまま気だるそうに呟いた。

『…いいんですか?このままでは…』

城主の龍興さまは腑抜けになってしまわれたのだから。
政務をほったらかして遊び呆けている…

今、織田に攻め込まれでもしたら…

『…間違いなく滅ぶだろうね』
わたしの不安を代わりに口にしたのは半兵衛殿

…気の無いふりをして
本とは誰よりも国のことを心配している半兵衛殿

頭の中じゃ私の予想もつかないこと色々考えている

今もそうなんですよね?


『織田は間違いなく、この期を狙って攻めてくるでしょうね』

半兵衛殿の返事はない

こうして穏やかな時を過ごして居られるの日も…
もしかしたらあと僅かかもしれない

半兵衛殿がなにより好きなお昼寝タイム

私もこの時間が大好きだから私は戦うの

守るために戦うの

わたしは戦うことでしか半兵衛殿の力になれないから…

『半兵衛殿、わたし鍛錬しに行きたいんですけど…』

少しでも強くなって、半兵衛殿の目指す(寝て暮らせる世)を邪魔する奴等を倒していかなくちゃ


『眉間にシワが寄ってるよ』
言われて視線を落とせば半兵衛殿が自分を見上げていた

『鈴は思い詰めすぎなんだよね〜、鍛錬もいいけどたまには昼寝も必要だよ』

『半兵衛殿はたまに、じゃないですよね』
私の主はどこまでゆるいんだ…
自然と笑みも溢れていた


『だ〜いじょ〜ぶ、不安がることはないよ。大切なこのひとときを守る為なら…』

ムクッと体を起こして半兵衛は鈴に笑顔を向けた

『僕だって、たまには張り切って戦うつもりだからね。鈴くらい守ってあげれる強さは持ってるつもりだよ』

普段は適当でやる気が無さそうに見える人だけど、ここぞと言うときには誰よりも頼り甲斐がある人だ

不安がる私をいつもさりげなく支えてくれる

そっと包み込むような優しさを持ってる


だから私は

貴方の側から離れられない


『だからもう少し、寝かせてくれないかなぁ』

『わかりました、私の膝でよければいくらでも』

『鈴の膝がい〜んだよね』


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