恋愛微熱36.9℃ | ナノ

幸せがくすぐったい

[ほんとはね、ずっと前から好きだったんだよ]

帰宅してからスマホに届いたメッセージ。
それは本日、晴れて付き合うことになった彼女、妃乃からのものだった。

部活が終わってからのほんの少しの談笑タイムに、なんかいい感じになって、その流れでさらっと告白した。調子に乗っていたと思う。もしも彼氏にするなら、そんな他愛ない質問に自分を選んでもらえて嬉しくないわけが無い。
しかもその軽いノリみたいな告白に意外にも嬉しそうにOKしてくれた妃乃、冗談はやめてと笑い飛ばされるかと思っていたから正直驚いた。

そんな彼女からのメッセージ

死ぬかと思った。なんて幸せ者なんだ俺。

[気づいてなかったよね?びっくりした?]
かわいいキャラクターのスタンプを添えられて送られてきたメッセージに俺はものすごい速さで返信した。

それヤバイ、マジで嬉しい

そう頭に浮かんだ言葉をそのまま送ったら彼女からの返信も早々に届いた。

[私もね、すごく嬉しかったよ。マジで(笑)]

柄にも無くテンション上がって眠れなくなったりして…


「ふーん、それで寝坊して朝練ギリギリだったのか」
「まぁそう言う事になるな…」
「んー、まぁよかったでねーの」
「おー、マジ良かったネ、俺」
朝練後、片付けをしながら松川に昨日のことを話していた。人のノロケ話なんて興味無さそうにではあるがおとなしく聞いてくれた松川、いい奴だなとしみじみ思っていたら松川との会話が聞こえたのか及川が飛んできた。

「ちょっとマッキー!妃乃ちゃんと付き合うことになったってホントなの!?」
「おー、おかげさまで。ホントお前のお陰だわ、マジサンキュー」
「はぁ!?マジで言ってんの?え、ナニコレ、マジなの?」
「大マジですけど」
「…………」
開いた口がふさがらない状態の及川、そんなにショック受けるほどだったのかよ…

「オイ、くっちゃべってねぇでさっさと上がるぞ!」
岩泉にケツを蹴られたことで及川のスイッチが再びONに切り替わった。
「ちょっと妃乃ちゃん!なんでさ!マッキーでいいの!?」
及川の憤りの矛先は彼女に向けられたようで、突然話をふられた妃乃はなんの話かわからず首をかしげた。

「ぜーったい俺の方が優良物件だよ?考え直した方が良くない?」
「んー…物件?引越しの話?」
「いや、そ〜ゆうことじゃなくてさぁ」
訳のわからぬまま及川の話に付き合う彼女、話が噛み合ってない。そんな二人の間に割って入って無理矢理に引き離す。
「ちょっとマッキー!!邪魔しないでよ」
「あのー、俺の彼女なんでちょっかい出さないでもらえますかー」
そう言ってみたら引きつる及川の顔、そして捨て台詞
「マッキーのくせに生意気だよ!」
「お前はジャイアンか」

「おい、いい加減体育館締めんぞ」
呆れ顔の岩泉の急かす声にわらわらと体育館を後にする部員たち
自分も荷物持って入口に向かい歩き出したんだけど、ツンとジャージの裾を引かれて振り向いた。

「眠れなかったのは私のせい?」
目の下を指さして彼女は言った。

隈、できてたか…めっちゃ恥ずい
「当たり、嬉しすぎて全然眠れんかった」
「…そっか」
素直に認めたら妃乃は微かに頬を染めて嬉しそうに微笑んだ。

…抱きしめてぇな、と思った。


「…おーい、イチャつくなら体育館出てからにしてくれや」
「へーい」
「はーい」


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