二人だけの小宇宙 | ナノ

これから青春はじめます

眠い目を擦りながら歩く朝の通学路
ちらほら目に付く同じ制服の男子高校生、その人波に紛れる小さな背中を見つけて駆け寄った

「はよー、ちこちゃん」
「あっ、おはよう二口くん!」
彼女に並んで声をかけるとしっかり目を見て挨拶してくる律儀な彼女。俺でも相当身長差があってもう自然と上目遣い。彼女が青根と会話してる時ドレホド見上げてるんだろうかと想像しただけで笑みがこぼれた。

そんな小さくておっぱいの大きな可愛い子が、一人で帰ろうとしていたものだからどこの学校にもいるであろうガラの悪そうなチャラ男の目に付いてナンパされていた。その場面をタイミングよく発見して颯爽と助け出した青根、そんな青根を王子様みたいってキラキラしていたちこちゃん。
ナンパにからまれてた彼女を青根が助けてあげて、それからなんとなく一人で帰すのは心配になってバレー部の見学に連れてった。
そしたら…

「女子!?」
「マジで!?」
「マネージャーキターーー!!!」
忽ちに群がる先輩たちに囲まれたちこちゃん…連れてきたのは失敗だったか?と思ってたらスッと彼女を遮るように一歩前に出た青根

「うお、でかいなお前!190あるんじゃね?」
「…185です」
「マジかよ、190行くなお前!」
注目は青根の方に注がれちこちゃんは小さく安堵のため息をついていた

「ううん、楽しかったよバレー部の人達。最初はすっごく圧倒されたけど」
確かに賑やかな人だらけで無口な青根も圧倒されてる様子だったっけ…あの青根が戸惑う姿なんて滅多に見られないからおかしくて仕方なかった。そしてちこちゃんも先輩たちにマネージャーやらない!?としつこく誘われていたのを思い出した。

「それならさ、マネージャーやればいいじゃん。今マネージャー卒業しちゃっていないみたいだし」
男子校レベルの女子不足で男子しかいない部活なんてつまらない。女の子がいる方が頑張れるに決まってるし、青根の奴も彼女の事を気に入ってるっぽいから…面白いことになりそうだ。そんな軽いノリで誘ってみた、のだけれど

隣で真剣な顔して考え込むちこちゃん…
「私バレー経験ないけど、できるかな…」
「で、出来るよ!ルールなんてこれから覚えていけばいいんだし!青根が手取り足取り教えてくれるから!」
そう言うと彼女は表情を崩した。

「そっか、じゃあ、やってみようかなぁ…」

マジかぁ…
やったな、青根…

「実はね帰ってから考えてたんだ、マネージャーやってみたいなって」
うつむきながらそっとはにかんだちこちゃん
「…へぇ?部活見学そんな楽しかった?」
「うん、先輩たちの練習だけでもすごい迫力だったから…」
「うん?」
「見てみたくなったんだよね、…近くで」

何を?という質問は野暮ってやつだなって思った。
ほんのりほほ染めて、笑みを浮かべる彼女が何を考えてるか聞くまでもなかった。

そっかぁ…
やったなぁ、青根…

その嬉しい事実を教えてやった時の青根の反応が楽しみです。


[ back to top ]