二人だけの小宇宙 | ナノ

まなざしはとろけた

「青根くんが王子様に見えた」
青根を見てコーフン気味に言ったちこちゃん。
正直耳を疑った。

放課後、バレー部の見学へ向かう途中、生徒玄関の側で彼女がガラの悪い上級生にナンパされていた。無理矢理に手を引かれ今にもどこか連れていかれそうになっていて、それをいち早く察知した青根が持ち前の怖い顔で救い出し事なきを得た、訳なのだが…

「いやいやそれは無いって、青根が王子様って…」
思わず笑った。らしく無さすぎて笑った。
当の青根も柄ではないと恥ずかしそうにブンブンと音が聞こえてきそうな程に首を横に振っていた。
確かに今の青根は俺から見てもかっこよかったけど、どっちかって言うと見た感じ王子様は俺じゃね?まぁそれは冗談だとしても乙女のピンチに颯爽と駆けつける青根の姿は王子様って言うよりヒーローの方がぴったりなんじゃないの?ヒーローはヒーローでもマーベラス的ないかつい奴な。

「あっ、そっか…ヒーローだね、ヒーローだよ青根くん!」

と、言っていたもののほんのり頬を染めながらキラキラ輝く瞳で青根を見上げてる彼女を見ていたら、その瞳に映る青根は間違いなく絵本に出てくるような白馬に乗った白タイツにかぼちゃパンツの王子様と化しているんじゃないかと思えた。

そんな青根、笑うしかないじゃないか

それでも彼女がそんな青根に胸をときめかせているというのなら俺は何にも言わないよ
…でもやっぱちょっと笑わせてくれ

「何がそんなに面白いの??」
不思議そうに見上げてくるちこちゃんと、いたたまれない様子の青根、そんな二人お構いなしに俺は気が済むまで笑わせてもらった。


[ back to top ]