過程はありきたりでいい | ナノ

イケメンさんに遭遇しました

「アララ?君、メガネじゃなかったっけ?コンタクトにしたの?いーね、いいんじゃなーい?」
お手洗いから体育館に戻ろうとしたとき、突然妙にフレンドリーな感じで話しかけられた。振り返り顔を確認したけど知らないひとで、でも向こうはこちらを知っているような口ぶりで首をかしげた。
こんなイケメンさんに知り合いはいない。

「…私、メガネかけてたことないですよ。人違いじゃないですか?…じゃ」
きびすを返して体育館に向かい歩き出した、再び引き留められた。
「ちょっ、ちょっとまってよー。君烏野バレー部のマネちゃんでしょ?」
「…はい?」
振り替えればマジマジと顔をのぞかれちょっとたじろぎした。

「あれ、よくみたら君違うネ?烏野のメガネのマネちゃんじゃない」
「よくみなくても違いますよ!」
あんなきれーな人と見間違えられるなんて恐れ多いにも程がある!
「へぇー、じゃあ君新しいマネージャーなんだ?」
「は、はい。今年から…」
「そっかそっかー、じゃあ一緒に体育館いこっかー」
イケメンさんは私の肩に手をやり、強引に歩き出した。
「え?あの、体育館て…第3体育館ですか?バレー部の方なんですか??」

「そうだよ、僕は青城のキャプテンでセッターなんだよ」
爽やかな笑顔で彼は言った。
「え、なんで、試合に出てないんですか!?」
田中くんが言ってたみたいに烏野はなめられているの?ペロペロなんですか?

「うん、ちょーっと足をやっちゃってね、でももう治ってたから…」
肩におかれたイケメンさんの手に少し力が込められたのを感じた。

「これから、覚悟しておいてネ」
笑顔はそのままだったけど微かに漂う迫力にゾクッとした。


体育館に戻るとギャラリーが一斉に黄色い声をあげた。
「及川さーん!」
女の子たちが口々にエールを送っている。
及川さんていう人なのか…
スゴい…まるで、アイドルだ。
「あららー1セット取られちゃってるじゃないですかー、やるじゃん烏野」
「戻ったのか!足はどうだった?」
青城の監督さんが振り返り目を丸くした。
「バッチリです、軽い捻挫でしたしねー」
及川さんはといえばそんな監督さんの顔を気にも止めず話を続けている。

どうしよう…

「お、おい、なんで烏野のマネージャーがここに居るんだよ」
部員の一人がようやく私の存在にツッこんでくれた。
「あー!さっきそこであったから一緒に来たんだよ」

「す、スミマセン、そろそろ手を離して貰えますでしょうか」
言えばようやく肩におかれた手が離れた。
「し、失礼しましたー!」
足早に立ち去れば追いかけてきた声
「まったねー!烏野のマネちゃん」
振り向くと爽やかな笑顔で大きく手を降っている及川さん
烏野ベンチに戻ると物凄い怖い顔した田中くんに出迎えられた。

「佐倉、あの優男と知り合いだったのか?」
「ち、違うよ!廊下でバッタリ会ってなんか連れてこられたというか…」
「ナンパかあのやろう!うちの大事なマネージャーに!!消毒消毒オラオラァ!」
「きゃあ!イタイッ!」
田中くんは叫びながら及川さんの手が置かれていた方の肩を力一杯払い始めた。

「こら!何騒いでる!」
「田中!女子を叩くなっ!」
田中くんは大地さんとスガさんに叱られた。


不器用なヤキモチ


最終セット、まもなく開始
田中くんは怖いくらいに気合いが入っているようだった。


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