過程はありきたりでいい | ナノ

まるで陽だまりのよう

「えっと、あの、わたし、1組の佐倉市子っていいますっ!運動は全然できないんですけど、試合観戦は大好きで、バレーは特に好きで…」

あたふたしながらも自己紹介をしているのはマネージャー志望の2年生の女の子。田中と同じクラスだというのだけど、そんな彼女を見守る田中の様子がどうもおかしいと話題に。

じっとみつめていたかと思ったら何かを思い出したのか邪念でも振り払うかのように頭をブンブンと振りまくり、気がついたらほほを染めてぼんやりしているし

必死になって自己紹介をしてくれている人を前に私語なんて失礼きわまりない。それをわかっていてもどうしても気になった田中の異変にさすがの大地も我慢できなかったのかこっそり耳打ちしてきた。
「スガ、まさかと思うけどさ、田中の奴…」
「…うん、そのまさかだと俺は思うよ」
「…やっぱりな」

恐らく。
ではあるけれど、大地も同じ考えのようだ。

田中は彼女に恋をしている(ような気がする)

「あ、長々とすみません!とにかくバレーは大好きなんで、あの…よろしくおねがいします!」
深々と頭を下げた佐倉さん

俺たちも「よろしくな!」と応えると、さっきまで緊張して強ばっていた顔にまるで花が開いたみたいにフワッと笑顔が咲いた。

「よろしくな佐倉!!」
「うん、私も頑張る!精一杯サポートするからね」
「ッシャアア!頑張るぜェエエ!」
いつも暑苦しい田中の笑顔すら、今日はなんだか違って見えた。



潔子さん潔子さんと騒いでいた奴が惚れたと思われる女の子は彼女とは正反対のふんわりした感じの女の子でした。


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