「旭さん…でしたよね。お疲れさまです!そしてはじめまして!」
町内会チームとの試合が終わってコートから出た瞬間に駆け寄ってきた彼女は満面の笑みでタオルとドリンクを差し出した。
「あ、ありがとう…えっと?」
「あ、私は望月寧々っていいます!よろしくお願いします!」
ペコリと頭を下げ、顔を上げた彼女の笑顔は崩れない。
大体初対面の人には萎縮されるんだけどな、日向みたいに。
初めて顔をあわせた時の日向の反応は怯えた小動物みたいでなにげにちょっと傷ついた。まぁすぐに打ち解けれたのだけれど…
その反応がフツーだったりするのだけれど、この子は人懐っこく寄ってくる子犬みたいで少し、動揺した。
「旭さんのスパイク、スゴかったですね。私がレシーブしたら腕もげちゃうんじゃないかってくらいの迫力で、ほんと、スゴかったです!」
「え!?いやっ、そんなことないよ!俺なんかそんな…」
お世辞かもしれないけれどものすごく持ち上げられて逆に申し訳なく思った。
1ヶ月部活をサボっていた付けもあって、西谷に指摘されてしまうくらい飛べていなかったし情けないけど大地が言うように俺はほんとに、へなちょこだ
「そんなこと、ありました」
「えっ!?」
身長差から自然と上目遣いになる彼女を見下ろした。
その目はキラキラと輝いていて、息が詰まりそうになった。
「日向がいつも言ってたんです、エースはかっこいい、エースはすごいんだ!エースになるんだ!!って…いつもはいはいって聞き流してたんですけど…」
彼女はドリンクボトルを持つ俺の手をガッと握って興奮押さえきれない様子で言った。
「烏野のエースは本当にスゴかったです!とってもかっこよかったです!」
頭の中で大爆発が起こった。
驚きと興奮と羞恥心が混ざりあって化学反応を起こし弾けた。
「う、あ、いや、俺は、そんな…」
面と向かって、ましてや女の子にかっこいいなんて言われたらどう反応すればいいんだ。
言葉に詰まる挙動不審な俺に彼女は嬉しそうに笑った。
「だからエースが、戻ってきてくれて本当によかったです」
おかえなさい
その一言がどんなに嬉しかったか、他に比べようがない。
「ありがとう、えっと、…その、…ただいま」
じわっと溢れてくる涙を見られないように、タオルに顔を埋めた。こんなことで涙ぐむなんて男としてどうなんだろう、やっぱり俺はへなちょこだなって思った。
それでも、期待してくれてるみんなや、こんな俺にあこがれてくれている日向、あたたかく迎えてくれた彼女に呆れられないよう頑張らないといけないなって心に決めた。
君の前だけでも、格好つけさせて
「がんばるよ、俺。ずっと、かっこいいって思ってて貰えるように…」
「私も頑張ります、旭さんの力になれるように!」