短編 | ナノ

幼い愛が育つことを願って

「足を閉じろ足を!!」
教室に靖志がやってくるなり怒鳴り声をあげた。
言われた私の足は確かにだらしなく左右に放り出されていた。

「いいじゃん、ジャージはいてるし」
「良くねぇよ!てかそのスカートの下にジャージ履くのもやめろ、変だろ」
男子だらけの教室でパンツを見せるわけにいかないからジャージを履いてガードしてるんじゃないか…
「いいの?彼女のパンツがクラスの男子に見られても」
「だれがお前みたいながさつでだらしない女子のパンツ見て喜ぶんだよ」
言ったなコラ…

「こんだけ男子に囲まれてたらがさつにもなるでしょーよ」
そう言いながら足を椅子に乗せ体育座りになると靖志は大きなため息をついた。

「青根の彼女は男子に囲まれてても女の子らしいままだぞ…」
確かに…靖志の後輩のカップルは有名だ、というかよく目に付く。青根くんが大きいからってのもあるし、そのとなりには大体小さくて可愛い彼女がちょこんと佇んでる様子はなんだかとってもメルヘンだ。
「可愛いくて胸でかくてお菓子作りとかしちゃう彼女ちゃん…青根が羨ましいわ…」
ボソッと呟いた靖志には流石にいらっとして言い返していた。

「私だってアンタみたいな煩い筋肉バカより寡黙で真面目そうな青根くんを彼氏にした彼女ちゃんが羨ましい」
「なんだとコラ!」
「ちょっと取り替えてもらおうか」
冗談で言った一言だったけど、靖志は黙り込ん出しまった。なに、真剣に検討してるの?おいおいふざけるなよ?

「…無理だな、青根の彼女ちゃんは俺には眩しすぎる」
真顔で何を言い出すのか。そして頭の中でどんなシミュレーションをしたのかわからないけど彼女の前でそれは失礼すぎるんではないですか。

ほんと、まるでダメな男、略してマダオだよ靖志は
こんなやつ、まともな女の子は相手にしてくれないよ、

「そうだよ、アンタにはあたしくらいでちょうどいいのよ」

面食らったみたいに驚いた顔の靖志
彼はその言葉を噛み締めるように頷いて言った。

「そうだな、お前みたいな奴の相手できるのも俺くらいなもんだしな」


決して甘くはないけど、これでも相思相愛ってやつなんです。


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