短編 | ナノ

微笑む僕は既に狼

昼休みになった途端に、ポケットに入れていたスマホが震えだした。

【今すぐに部室に来い!!】
木兎さんからのメッセージ

頭に浮かんだのは面倒くさいのひとこと。
けれど先輩命令だしすっぽかす訳にも行かなくて仕方なく部室に向かった。

今日は自分の誕生日であるとこはみんな知っている。0時になった瞬間にみんなから一斉にメッセージが届いた。それで俺の誕生日イベントは済んだかに思えたのに、今のコレもきっとそのお楽しみの一つだろう…

何が起こっても驚かない、部室の扉の前で深呼吸をして気持ちを落ち着かせてから恐る恐る中に入った。

しかし部室には木兎さんはいなくて、あったのはものすごい大きな箱。
【ただちにあけるべし】
と書かれていたので嫌な予感しかしないけど開けてみた。リボンを解くと中から飛び出してきたのは「ハッピーバースデー!あかあしー!!」と三角のカラフルな帽子と鼻眼鏡を装備したご機嫌な先輩マネージャーだった。

「…」
何が来ても驚くまいと思っていたけれど、これは完全に予想外だった。
「驚いた?驚いた?」
自分の反応を見ていたずらは大成功かと目を輝かせている先輩。

ああ悔しい、こんなサプライズに驚かされるなんて、そしてこんなサプライズを嬉しいと思っているなんて。

「…驚きましたよ」
そう言えば先輩は両手を上げて大げさに喜んでみせた。

「本当に驚きました、先輩がこんなに大胆なことしてくるなんて」
「…え?」
「コレは俺への誕生日プレゼントってことなんですよね」
「…うん?」
首を傾げる先輩の手を取って、強引に抱き寄せた。
「先輩がプレゼントなんですよね、もらっちゃっていいってことなんですよね」
「え!?なに?なんでそうなるの?ちょ…」
腕の中で慌てている先輩の付けていた鼻眼鏡を外してやると、これから起こることを察してか彼女は静かになった。

いつもより近い距離で見る先輩の顔はそれはもう真っ赤で、そんな彼女のかわいい唇をそれはもう美味しくいただきました。

ごちそうさまです。

部室の外ではサプライズ主犯格の3年が大成功〜と小さくハイタッチしていましたとさ

先輩たち、珍しくグッジョブです。


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