短編 | ナノ

もどかしき第三者

青根くんは無口だ。
バレー部のマネージャーを始めたばかりの頃はほとんど声を聞いたことがなかった。
二口くんが青根くんと楽しそうに話しているのを見かけてからはソレがなんだか悔しくて自分から話しかけるようになった。朝ごはんなに食べたとか、小テストどうだったとか、くだらない質問が主だったけど青根くんは頷いたり首を振ったりだけじゃなくて単語だけだったりしたけれど律儀に答えてくれた。それがどうにもうれしくて、わたしはいつでも青根くんに話しかけた。相変わらずどうでもいい話ばかりだったけど。

バレー部に入部してから半年を過ぎた。
それなりに長い時間を過ごしてきたわけだから少ない会話でも青根くんの気持ちを理解できるようになってきたと思ってる。二口くんにも負けてないと思ってる。
「へー、そうですか」
心底どうでも良さそうな二口くん。
「おやおやヤキモチですか?」
「なんでお前らが仲良くなってオレがヤキモチ妬くんだよ」
「青根くんのおとなりポジションを奪われたら淋しいんじゃないかと」
「なにそれ、そんなんじゃねぇし俺は」
めんどくさそうな二口くんは吐き捨てるように言った。

「てゆーか、もう青根の気持ちには応えてやったわけ?そんだけ言うってことはもう青根も遂に告は…」
「え?応えるって何に?」
何のことか首を傾げる私に二口くんはしまった!というような顔を見せた。
「なんだよー、おめーが青根の気持ちがわかるようになったとかいうから俺はてっきり」
「何がよー、わかるよー?手に取るように!」

最近の青根くんはとくに、照れ屋さん。
ナイスキー!とかナイスブロック!とかカッコイイ!って声援送るとすぐ顔赤くなる。そこが可愛かったりして…

「お前、全然わかってねぇし…」

呆れてる二口くんの言ってることがわからなくて私は首を傾げるしかできなかった。




「青根くん、今日も頑張ってこーね」
彼女のエールに頬を赤くして頷く青根。
通じあってるようでまだ一方通行な青根の想い、これは哀れだなと思っていたけれど、当人同士はなんだか嬉しそうだからこれはこれで幸せなのかなぁと思いを改めて俺は二人の背中を見守っていた。


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