連れてかれてみたからりと晴れ渡る空、そんな日のこと。 『良い天気っすね。』 《ミャア》 『あ、花に水やらなきゃっす。』 《ニャー》 『一緒に来る?獅子丸。』 《ナーウ》 『じゃあ行きますか。』 * * * 『およ?今日は時間あるんすね。せーちゃん先輩。』 「久しぶりだね、空。」 いつもの銀色のじょうろを引っ提げてきたが、どうやら不要だったようだ。 「おいで。」 『はーい。』 《ニャーオ》 「あれ?その子は?」 『まーくん先輩とやぎゅ先輩に頼まれて助けた猫っす。獅子丸クンですー。』 「…随分と逞しい名前だね。」 『ふふふー。』 「それにしても、珍しい毛色をしてるね。赤い猫なんて初めて見たよ。」 『ボクもっす。触り心地も最高なんすよ。』 「へえ。触ってみたいな。」 《ミー…》 「あれ?」 『獅子丸クンは人見知りみたいなんす。まーくん先輩達も避けられてましたー。』 「そうなんだ。じゃあゆっくり慣らしていかなきゃね。」 《ミニャア》 「あ、そうだ。」 『?』 「空に見せたいものがあるんだ。」 * * * 「此処だよ。」 『ワォ…』 腕を引かれて連れて来られたのは屋上庭園だった。 「どうかな?」 『…正直言葉が出ないっす。良い意味で。』 「ふふっ、良かった。」 『これはせーちゃん先輩1人で?』 「そうだよ。ここまで作るのはなかなか大変だったけど、俺だけの秘密の場所って感じで楽しくてね。」 『成る程。』 「あ、でももう俺だけの場所じゃないね。」 『?』 「俺と空の場所。」 --------------------------- 『へへ、光栄っす。でももう1人…いやもう1匹居ますよー。』 「え?」 『せーちゃん先輩とボクと獅子丸の場所っす。』 《ミャーオ》 「あはは、そうだね。」 |