見つかってみた




「でも、どこを探せばいいんスか?」

勢い良く体育館を飛び出したが、考えは無かった。

「闇雲に探しても見つかりそうにもないよね…」

「探し回っているのは私達だけではありませんしね。」

「そう焦るな。俺達には手掛かりがある。」

「手掛かり?」

「ああ。仁王、お前が最初に裏長を見かけたのは何処だ?」

「海友会館の屋上じゃ。」

「精市、お前は何処だ?」

「花壇だよ、海友会館脇の……あ!」

「そうだ。恐らく彼女は海友会館にいる。」

 * * *

「1階には居なかったぜ。」

「2階にも居らん。」

「ふむ、残るは3階か。」

1、2階を手分けして探したが見つからなかった。最後の希望を託して、全員で3階をくまなく探す。

「居ませんね…」

「裏長どころか誰も見つかんねー。静か過ぎるだろぃ。」

「屋上に繋がる階段も無いな…」

「此処に居る確率が高いんだが…」

「柳センパーイ!」

「どうした、赤也。」

「この部屋ってなんスか?」

「"応接室"、か。来賓を通す部屋だ。」

「今は使われてないんスか?」

「ああ、この海友会館は旧校舎だからな。校長室の隣に新しい応接室が作られてからは此処は物置状態だ。」

「へえー。」

「じゃが、ちいとおかしくないか?」

「どういうことだい?」

「見てみんしゃい。ドアノブに埃が全然付いとらん。物置をそんな頻繁に開けるかのぉ?」

「た、確かに…」

「言われてみればそうだな。もしかすると……」

「この中に居るってことか!?んじゃあ思い切って開けるぜぃ!」

「待たんか!丸…「うおっ!!!」

「センパイ!?」

「大丈夫か!?丸井っ……え?」

尻餅をつく丸井。駆け寄る切原と幸村。目の前には…

「い、犬?」

「シベリアンハスキーのようだな。」

「何でこんな所に居るんだ?」

「番犬かの?」

「それにしては大人しいですよ。」

「あ、奥に入って行ったぜ。」

シベリアンハスキーに続いて部屋に足を踏み入れた。そこは赤い絨毯が敷かれ、シックな家具で統一された空間だった。まったく物置じゃない。

「驚いたよ。まさに応接室じゃないか。」

「この鳥、作り物っスかねー?」

《バサバサ》

「うわっ!!」

「気をつけろ、赤也。それは猛禽類の鷹だ。下手をしたら襲われるぞ。」

「これ…」

「どうした、幸村。」

「このスミレ、俺が育ててるものと同じなんだ。」

「鳥、そして花…」

「間違いありませんね。きっとこの部屋が裏生徒会室です。」

そして残るは、

「あったナリ。屋上への階段。」

部屋の奥にひっそりとある階段。きっとこの先に……

ガチャリ

「…やっと見つけた。」

『見つかっちまいましたねー。』



---------------------------
『1番乗りっすよ、先輩方。』

そう言って口角だけを上げた彼女の目は、あのスミレと同じ紫色だった。










人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -