その目、鼻、唇、頬、眉、首、腕、胴、背、脚、全てすべて。1つも欠けることなく彼のパーツは完璧な一級品だ。しかもそれらが黄金比でも成すがごとく体を構成しているのだから、当然ノボリさんは完璧にうつくしい。柔らかな灰色の髪、知的な額、切れ長の目、ガラス玉のような瞳。鼻筋は通り、輪郭はシャープで、薄くてきれいな唇がひかれている。クダリさんも基本的には同じ顔立ちだけれども、人懐こく笑った表情よりも、まるで常に何かと戦っているような凛々しい顔の方が私は好きだ。どんな名工が作った石像よりもうつくしい、芸術品のような人。一目見たらもう愛でずにはおれないのだ。恋愛感情とは違う。盲目的に執着する。この人を眺めているだけで、私の心は清廉なうつくしい何かでいっぱいに満たされる。なんという幸福な時間だろうか。


「なんです、何かわたくしの顔に付いておりますか?」
「いいえ、何にも!ただノボリさんがとってもうつくしいと思って」


そうですか、と彼は口ごもると帽子を目深にかぶってしまった。そんなものでそのうつくしい顔を隠さないで!私にあますところなく見せてくださいな!彼の頭の上に乗ったそれをひょいと取り上げれば、その下から赤に染まった恥ずかしげな顔。その表情もまた、完璧にうつくしい。


「返して下さいまし」
「嫌です、ノボリさんのうつくしい顔が隠れるから」


すると更に朱を増す頬。少しだけ潤んだその瞳は彼のうつくしさをますます際立たせる。


本当に彼はとてもうつくしい人なのだ。


そんなまばゆいばかりの芸術品に憧憬や心酔こそすれ、下世話な恋慕の情など抱くはずもない。








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