「何やってんのー?」
「ク…クダリ!なんでもありません!後ろに立たないでくださいまし!」
「メール?」
「違います!これは…そう、少々明日の天気を」
「ふーん…」
ああもどかしい。もどかしいったらない。君達さぁ、どう考えたって好き合ってるじゃん。ていうか好き合ってるよね。両想い。僕知ってるし。僕が知らないと思ってるんだろうけど、二人ともバレバレだよ。どっちでもいいからはやく告白でもしちゃえばいいのに。ああまだるっこしい。よし、あの二人くっつけてしまおう。
「あ、ノボリ!携帯借りてもいい?もう天気見終わった?」
「…どうぞ。何をなさるのですか?」
「んんん…ちょっとメール」
「自分の携帯を使ったらどうです?」
「充電切れちゃったー」
なんてね。充電器持ち歩いてる僕がそんなわけない。デスクの上のノボリの携帯をつかみあげた。
「わたくしの携帯ではアドレスが入っていないのではありませんか?」
「だいじょぶ。入ってる」
だってノボリにあの子のアドレス教えたの僕だし。あの子にノボリのメアド教えたのも僕だけど。壁に背を預けて携帯をぱかり。メールメニュー、開く。送信ボックス、開く。『本日もお疲れさまでした。ゆっくりおやすみ下さいまし。』…なぁに、このつまんないメール。受信ボックス、開く。『ありがとうございます!ノボリさんもお疲れ様でした。おやすみなさい』…こっちもつまんない。メール新規作成。「誰に送るのですか?」無視。カチカチと文字を打ち込む。…ん、まぁこれでいっか。「クダリ!」「内緒!」送信。
「はいコレありがとー」
もちろん送信したメールは削除済み。僕はこういう時にヘマなんかしない。しばらくノボリは僕から受け取った携帯を何やらいじってたけど、とうとう諦めたようにデスクへ置いた。
「ノボリー…女の子にメールするのにあんなそっけないのダメだよー」
「ひっ、との、メールを勝手に見たのですか、」
「ごめんごめん、間違って開いちゃった!」
「…次は気をつけてくださいまし」
「はーい。ねえノボリ、あの子のこと好きでしょ」
「違います!今日はたまたま、その…面倒なお客様のお相手をなさっていたのを見ましたので」
「酔っ払いの相手とか?」
「そうでございます」
へぇぇー。へぇぇー!じゃあそれなら何で昨日も一昨日もおんなじメール送ってんのさ!毎日あの子が酔っ払いの相手をしてるとでも?そりゃあ大変だね!
「とにかくまぁ、そういうことでございますから。恋愛感情はございません」
「あっそ。」
ノボリは本当頑固だね!こんな奴を好きになる子の気が知れない。…あ。
「ノボリ、メールきてるよ」
「クダリにではありませんか?さっきのメールの返信とか」
「僕にじゃないよ」
コートを羽織って部屋を出た。僕は間違いなく今届いたメールの内容を知ってる。あとのことは、知ーらない!
件名 Re:
本文
>
>これは呪いのメールです。
>三日以内にあなたの好きな人ひとりにこのメールを回してください。
>三日間をすぎても誰にも送らなかった場合、あなたは一生愛する人と結ばれることはないでしょう。
>しかし三日以内に相手にあなたの気持ちを伝えることができれば、あなたは末永く幸せになれるでしょう。
>