上下左右まっしろだった。
どこもかしこもまっしろで、歩けども歩けども真っ白しか見えないから、とうとう疲れて座りこんでしまった。
目を閉じてみる。そしたらまぶたの裏っかわに、私の大好きなふたりがじわりと見えた。
黒のコート。ノボリさんだ。泣いてる。白いコート。クダリさん。泣いてる。
いって慰めなきゃ。でも足が動かない。どうやってふたりのところにいったらいいかも分からない。ふわふわしてとっても変な気分。夢の中にいるみたい。
二人の前には緑の帽子が置いてある。一般駅員さんの帽子だ。私のとおんなじ。
自分の頭の上に手をやってみたら何にも乗ってない。あれはひょっとしたら、じゃあわたしの帽子かも知れない。
まぶたの中のふたりの唇が動く。うつろなふたりの目がゆっくりとわたしをみあげる。頬を涙が幾筋も伝っている。
( 、)
え、なに?聞こえないよ。
なにも聞こえないよ。