「今日は僕とダブルトレインおいでよ!」
「え!いいんですか!?」
「いいよー!ノボリには言っとくし。改札には他の人が立ってくれるから!」


ね、と私の後ろに声をかけたクダリさん。つられて振り向いてみたら私と同じ緑色の制服で帽子を目深にかぶった人がすぐ後ろに立っていた。いつのまに!
非常に申し訳ないとは思うのだが、久しぶりにクダリさんのバトルが見たかった。とても見たかった。誘惑には勝てない!ちょいっと会釈をしたらにこりと微笑んでくれたので、怒ってはいない。…多分。クダリさんに腕をひかれるまま詰所を出た。見慣れない顔だったけど、新人さんかな。


がたんごとんと動くダブルトレイン7両目に、私たちは隣同士で座った。トンネルに設置されているライトから一定の間隔で白い光が閃く以外、窓の外はまっくらだ。ガラスには私とクダリさん、並んで座っているのがぼうっと映っている。沈黙。…気まずい。


「えー…しゃ、車内に二人っきりだなんて美味しいシチュエーション!クダリさん、逃げ場はないですよー。覚悟はいいですね!」


静かさに耐えきれずおどけてみたは良いが、クダリさんはじっとこちらを見ているだけで何も言わない。

「あの…」


沈黙。耳に痛いほどの沈黙。い、居た堪れない…!
…あれ。


電車は確かに動いているのに、全く音がしていないのだ。静かすぎる。クダリさんは私をじっと見ている。




気づいたらもう停車駅に着いていたらしい。今回は誰も来なかったな。と思っていたら、ドアが開くのと同時にバックパッカーが下りて行った!いつの間に!バトルしているところを私、見たっけ?
クダリさんをそっと見上げてみたけれど、いつも通りのにっこりした笑顔が返ってきただけだった。







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