今朝はどうも調子が良くない。だるい。全身が泥人形になったみたいだ。それでもしがない一駅員の私に、欠勤などと言う選択肢はないのである。


「おはようございます!」
「おや、おはようございます」


あれれれれ?今日のノボリさん、どうして白いコート着てるんだろう。クダリさんかと思ってしまった。


「ノボリさん、今日はクダリさんとおんなじ服着てるんですね!勘違いしちゃいました」
「…?わたくしは元々白いコートでございますよ。黒がクダリ、白がわたくし。まさか毎日見ていらっしゃるのにお忘れですか?」


ん?そうだったろうか。妙な違和感を感じたけれど、本人が言うならばきっとそうだったのだ。その証拠にほら、黒いコートのノボリさんを想像しようとしたってなにも浮かんでこない。


「…そうでしたね!嫌だ私ったらうっかりしちゃって」
「熱のせいで少し混乱しているのかもしれませんね…具合はもうよろしいのですか?」


具合?具合って何のことだろう。今日体がだるいってこと、話したんだっけ?

「昨日はひどい風邪で欠勤したのでしょう?四十度近くあると電話口で話していらっしゃったではありませんか。頭痛もひどく起き上がることすらできないと。…まさか仮病だったのですか…!?」
「いいええまさかそんな!違います!仮病なんて使ってません!」


そうだ。私は昨日、仕事を休んだのだった。ただでさえ駅員は少ないし、皆には迷惑かけただろう。後で謝っておかなければ。
思い出したように頭痛がしてきた。


「そうですか。それならばよろしいのです」


普段ならば私のちょっとの発言も執拗に追及してくるノボリさんがあっさりとひいたことに疑問が生まれる。「お大事になさいまし」ずきんずきんと痛む頭に、その言葉がエコーをかけたようにじわじわと広がっていった。



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