「諸行無常ですかねぇ…」


「どうしたの?」


「クダリさん。いえこの間の休日にね、カナワの先にダムがあるじゃないですか、あそこ行ってみたんですよ」


「ひとりで?」


「ひとりで」


「…何しに?」


「ダムを見に行ったにきまってるじゃないですかー!あと珍しいポケモン探しに」


「何か居た?」


「ロン毛のレパルダスみたいなのがいました!青くてカッコよかったです!でもそのポケモンの後ろの方に紫のタキシードと赤い蝶ネクタイのおにいさんが顔を赤らめ息を荒げて這いつくばってたから怖くなって逃げました」


「君の同類じゃん」


「あそこまで倒錯してませんよ…!」


「はいはい」


「ダムをのぞきこんだらすっごい深くて下の方には沈んだ家とか見えて、何というか感慨深かったです」


「あぁ、それで諸行無常って言ったのか」


「まあそれもあります。本題はここからです」


「何?」

「クダリさん、手持ちにダイビング覚えてる子いません?」


「いない」


「ですよねー」


「まさか何か落としたの?」


「本当は立ち入り禁止だったから柵とか張ってなくてー、つい身をのりだしすぎてしまったというか」


「何を落としたの?」


「定期入れです…!」


「また発行出来るよ?」


「大事なのは定期じゃありません!裏にノボリさんとクダリさんの隠し撮り写真入れてたんです!防水加工はしてあるので水につけたって大丈夫ですが、データの方をノボリさんに消されてしまったのでもうあれしか残ってないんです…!定期入れって普通水に浮くものなんじゃないんですか!?おかしいですよね!」


「おかしいのは君だよ」





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