「はー帰ろ帰ろ、疲れたつかれー……こ、この本しおりが出てくるぞ!」
「しおり?……あぁそのヒモのこと?えっていうか君、今までそれ見たことなかったってそういう……?」
「いやぁ何か改めて考えると新鮮な驚きでして」
「あぁそう……疲れてそうだね、早く帰りなさい」
「これ考えた人頭良すぎじゃないですか?」
「うんうんそうだね、君なんて本にお菓子の包み紙挟んでるもんね。汚れるよページが」
「ちゃんと洗ってから使ってるので大丈夫ですよ」
「どうしてそこまで頑なにお菓子の包み紙を使おうとするの君は……」
「……へぇー本のヒモってスピンって名前なんだー知らなかった」
「なに、調べたの?ネットって便利だねぇ」
「いえ、ぐぐったんじゃなくノボリさんに教えてもらいました!ほら」
「『本のヒモの名前』『スピン』……即レスとか!ノボリのバカちゃんと仕事してよ……!いやそれもだけどこの会話!君たち普段どんな会話してんの!?」
「分からないことがあったら即質問即レスですよ、ノボリさんはニュアンス検索もお手の物どころかわたしの行動パターンや趣味から『この間誰かが言ってたアレのソレってなんでしたっけ』みたいな曖昧な質問にも90%の確率で正解を導き出してくれるし『リモコンが見つかりません』とかにだって『テーブルの下は探しましたか?』とか返してくれるんです!これもほぼ的中、まさに生き字引」
「生き字引とはちょっと違うと思う……あとあんまりノボリに頼りすぎないほうがいいよ、それ絶対個人情報収集されてるよ。なんなら監視カメラとか盗聴器も疑った方がいい」
「おー噂をすれば影、ノボリさんからメッセージきました!……『してません』?なんだろう」
「す、ストーカーだー!」
「失礼ですがわたくし最初からここにおりますよ!」
「あれっノボリさんいらっしゃったんですかチィース」
「ずっといました」
「えっごめんノボリ気づかなかった。いつからいたの?」
「『クダリさんすいません、クラウドさん見ませんでした?』からです」
「あー、11時前くらいの?クラウドさんにお客さんきてた時のあれですか?」
「朝からじゃん!ストーカーじゃん!」
「ストーカーじゃありません、暇だったので彼女のほくろの数を数えていただけです」
「へぇーそうだったんですか。いくつありました?」
「露出してる部分だけでざっと7個です」
「えー結構少ないなぁー」
「君も大概動じないね……」