(たいくつだなぁ)




しとしと、しとしと




(雨の音、うるさいなぁ)




しとしと、しとしとしと




(なーんか、どろーっとしちゃう)




しとしと、しとしと、しとしと、ぽちゃん。




「……そうだ、ノボリさんで遊ぼう」
「聞き捨てならない」
「おぼぁぁぁぁ!居たんですかクダリさん!」



雨の日は退屈だ。お客さんが少ないんだもの。これがもしも休日だったなら、レンタルショップでも行って映画借りて来たりだとか、はたまた友達と長電話したりだとか。そういった楽しみも見つけられるんだけど、如何せん職場では流石にレンタルビデオなんか観れないし友達との電話もご法度である。


「ノボリで遊ぶとか言わないでくれる、最近ノボリ君の相手するのに疲れて白髪増えた」
「えっマジですか、じゃあノボリさんの頭皮ケアマッサージがてら白髪数えて来ます」
「それがストレスだって言ってる。おとなしくしてなさい」


ぎゅむっと首根っこ掴まれてデスクに押し戻された。


「ちぇー……クダリさんお堅いんだから」
「部下の悪戯は止めるのが上司ってもんだよ」
「イタズラしないです、ノボリさんで遊ぶだけです」
「それつまり悪戯でしょ」
「チチチ、クダリさんわかってないですね!」


椅子の背もたれに手をついてわたしの逃亡を阻止しているクダリさんへくるっと振り向きぐっと拳にちからを込めた。


「わたしはね…ノボリさんがいつも仏頂面だから、せめて休憩中くらいはその表情を崩して欲しくてノボリさんにじゃれてるだけなんです!つまりこれは愛ある行為なんです!」
「雨だと髪ハネて鬱陶しいなぁー……あ、ゴメン聞いてなかった」
「もう!」
「いいからおとなしくしててね。あと仕事してね」
「仕事なら終わらせました。だから退屈してるんじゃないですかぁー」
「じゃあ誰かの手伝ってきなよ」
「みんなヒマだーって言ってました」
「何なの、みんな職務放棄なの」
「ここんところ雨ばっかりでお客さんも来ないしー、デスクワークする時間ありまくりで書類がりがりなんてすぐ終わっちゃうんですよねぇ」
「あー、まぁ」
「だからノボリさんで遊ぼうと思って」
「いやその理屈はおかしい」


しとしとしとしと。地下にいるけど、どこかの配管から反響してくるのか、ここでじっとしていると雨の音が小さく聞こえてくる。しとしと。たーいーくーつー、ってべったり机にへばりついた。スチール製のそれはひんやりしててほっぺたに冷たい。「うーん………でもまー、いいかぁ。僕も暇だしね…悪戯はダメだけどからかうくらいだったら許可してあげよう」「なんですって!」ばっと振り向いたらクダリさんがドンカラスみたいなポーズで立っていた。ヤダかっこいい…!




「と、そういうわけでノボリさんをからかってみようという事になりましてね」
「どういうわけですか。全くわかりません」
「つまり悪いのは全部クダリさんってことです」
「僕ら悪戯してないよ!」
「なまじ悪い事をしたわけでもないので怒るに怒れない…微妙なラインですね。暇ならホームの掃除でも手伝ってきたらいかがですか」
「おっほー!その手があったか!わたしモップがけすっごい得意ですよ、クダリさん勝負します?」
「望むところだよ!僕に敗北してぴかぴかの床に膝をつくがいい!」
「コートが汚れては困りますから置いていって下さいましね」
「ハハーン?今の言葉忘れないで下さいよ?逆にわたしがクダリさんを這いつくばらせてあげまッ、ぎゃん!」
「あぁっ!?うわ馬鹿、雨の日は床すべるんだから気をつけて!」
「う、うわぁん痛い!」



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