「クダリさんおられますかー」


「おられますかじゃない、いらっしゃいますか。もう一回」


「うぐっ……す、すいません……クダリさんいらっしゃいますか」


「すいませんじゃない、申し訳ございません」


「申し訳ございません、クダリさんいらっしゃいますか!」


「うん、よし。何?どうしたの?」


「もう見られたかもしれませんが、これ明日の会議の資料です」


「もうご覧になったかもしれませんが、こちらがあすの会議の資料になります。ハイ」


「も、もうご覧になったかもしれませんが、こちらあすの会議の資料になります……」


「はいありがと。んー……ねぇ、4ページのグラフさ、これノボリ何か言ってなかった?」


「え、何もお言いになってなかったと思いますけれども」


「何もおっしゃっていなかったかと存じますが」


「な、なにもおっしゃっていなかったと存じま……クダリさん、クダリさんごめんなさいもういいです自分で勉強します」

「ご指導頂く身で大変恐縮なのですがわたくしまだ自分自身で書籍から学ぶ必要がありそうですご指導ありがとうございました不甲斐ない部下で申し訳ございません、そして最敬礼」


「ひぃぃぃ」








「結婚式の、あの教会の赤い絨毯なんでしたっけ」


バージンロード?」


「あ、そうですバージンロード…あれをね、バージンで歩く人なんて今どきめったにいないと思うんですよね!」


「ちょっとちょっと昼間からそういう話やめてくんない」


「だって結婚するって事は付き合って結構たってるって事ですよ、お見合いならわからなくもないけど!」


「まだお昼なんだけど、ねぇちょっと」


「それともあれですかね、セカンドバージンとかいうやつですかね!あれ意味よくわかんなくないですか?バージンにファーストもセカンドもあるかって、ねぇどう思いますクダリさん」


「僕は何も聞かなかった」



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