「どこでもドア、欲しくないですか」


「いらない」


「えー!どこでもドアあったら出勤一秒退社一秒、今まで移動に費やしてたあの時間もこの時間も、もっと有意義に使えるんですよ!」


「何言ってんの、どこでもドアあったら鉄道は終わりだよ。君も僕も失業だよしつぎょー」


「し、しつぎょう…!でっでもでもほら、そらをとぶ事のできるトレーナーさんたちだって電車乗ってあっちこっち行ったりするじゃないですか、別にどこでもドアがあったって鉄道衰退とかにはならないと思うんですけど!ねっ!」


「君、例えばほんとにどこでもドアあったとして、わざわざ仕事行くときラッシュのすし詰め列車に乗りたい?」


「いいえ!」


「ほらね」


「ああっ!間違えました、乗りたいです乗りたいです!すし詰めチョー楽しいです人のぬくもりさいこう………やっぱ乗りたくないです無理無理どこでもドア使います」


「それにホラ……どこでもドアで一秒移動できるようになっちゃったらさ、スクールの帰り道に好きな男の子をこっそり待ち伏せしてラブレターとかさ、そういう話もなくなっちゃうわけだよ」


「いやそれはもう今の時代ではそもそも見られる光景ではないと思います!絶滅危惧種だと思います!……でもそっか、どこでもドア使ったらキャッ遅刻遅刻ッ、どーん!いったぁいどこ見てんのよ、ハッ!どきゅーん!ってのもなくなっちゃうんですね!?……それは駄目ですね!」


「そんな状況、絶滅危惧うんぬんの前に僕見たこと無いんだけど」








「おなかすいたー!お昼お昼………うわ、お弁当寄っちゃってる!せっかくノボリがバチュルのキャラ弁作ってくれたのに!」


「あーあークダリさん鞄におべんとうばこ適当に詰めたでしょ!あ、もしくは朝カバンぶんまわして走ったとか?」


「両方…」


「コンボですか!駄目ですよおべんと乱暴に扱っちゃ!」


「うん、気をつける……って君もよりべんしてるじゃん!どうやったらそんな見事に寄るのさ!?ごはんとおかずがぐっちゃぐちゃだよ!?」


「まっ!私がよりべんさせるわけないじゃないですかー!これはですね、朝おべんとに綺麗におかず詰める時間がなくってやむなく適当に突っ込んだからこうなったんですよ」


「なお酷いよ!」





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