「あぁぁぁぁ………酷い………そんな……!」


「ど、どうなさったのですか…?」


「っ、酷い、酷い……っぐす、ひどい」


「何か…辛い知らせでもあったのですか?」


「…ノボリさん……」


「よろしければ話して下さいまし。聞いて差し上げる事しかできないのが心苦しいですが…ひとりで抱え込むより楽になるかもしれませんよ」


「っふ……あ、あの…ポケットに」


「はい。……え?ポケット?」


「ポケットにカイロとハートスイーツ一緒に入れてたら……と、溶けちゃったんです…!!」


「心配して損しましたよ!それくらいで神妙な顔しないで下さいまし!」


「だってだってこれこの間ノボリさんがくれたチョコだったのに……せっかくくれたのに…楽しみにとっといたのに……!」


「…………」


「……あ、でも冷蔵庫入れたらまた固まるかな。グスッ」


「あー、えーとそういえばわたくし今チョコ持ってたんでした。ほら、はい」


「うー…え?」


「それあげますからそんなにメソメソするんじゃありません。お菓子ひとつに、子供ですかあなた」


「わー……!チョコ!」


「そうですよ」


「ありがとうございます!」


「はい」


「おいしー!………ん、ノボリさんいつもお菓子持ち歩いてるんですか?」


「たまたまです」


「こないだもそう言っておなかを空かせたわたしにチョコくれましたね」


「偶然ですよ」


「ノボリさんはいつでもわたしにこっそりお菓子をくれます。まるで鯉に餌をやるおじさんのように」


「おじ………酷い言われようですね」


「まちがえました。公園で鳩を餌付けするおじさんでした」


「訂正するところはそっちじゃないでしょう!?」











「クダリさーん書類ここ置いときますからねー」


「んー」


「クダリさーんコーヒー淹れますけど飲みますよねー」


「んー」


「クダリさ―んコーヒー淹れましたよここ置きましたからねー」


「んー……あづっ!!」


「ギャッ何してんですかコーヒーに指つっこんで!大丈夫ですか!」


「い、いたい…あつい…」


「はやく手袋はずして下さい!いま氷持ってきます!」


「こおり?……あ、氷嚢?別にいらないよこれくらい……ちょっとおーい、走んない方がいいよ、転ぶよ」


「ぎゃん!痛いー!」


「もう、だから言ったのに……大丈夫?どこぶつけた?」


「ひざ…いたい……」


「よしよし、いたいのいたいの飛んでけー」


「ぐすっ。あ、どうぞクダリさんこれ、氷。……あの、火傷させちゃってごめんなさい」


「なんで君あやまってんの!あはは、意味わかんない!コーヒーと氷、ありがとね。あとね、僕が火傷なんてしなかったら君ころばなかったよね、ごめんね」


「何クダリさんがあやまってんですか意味わかんない!私が勝手に転んだんですよー!」


「君の真似しただけだもん」




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