「ノボリさんノボリさん」
「はい?どうなさいました」
「ちょっとね、お願いがあるのですけど」
「何です?あなたが改まって言うと気持ち悪いですね」
「きっ気持ち悪い!?酷い!たまにはきちんとしようって思ったらすぐこれなんだから!」
「たまにというのが問題ですね。で…何です?お願いって」
「おぉ、そうでした!あのですねー、ノボリさんのヒトモシを二匹、貸して頂きたいのですよー」
「………変なことさせるつもりじゃありませんよね?」
「変なことってなんですか?ノボリさんたちのコートに蝋たらして遊んだりですか?お望みならばやりますけど」
「結構です!」
「そーですかー。あ、あの子たちがいいです!今ソファで仲良しこよししてる二匹!」
「はぁ…構いませんけど。片方はクダリのヒトモシですがまぁいいでしょう。怪我させないで下さいましね」
「やったー!じゃあ早速行ってきますね」
「え、ちょっとお待ちなさいどちらへ!?」
「あえ?あ、そっか、言い忘れてました。育て屋さんご夫婦のところです!」
「そ、育て屋?何故です?」
「上司を見習って厳選というものをやってみようかと」
「……は、厳選」
「はい!ノボリさんとお揃いのシャンデラゲットだぜ、なのです」
「イヤイヤイヤ」
「え、何かマズいですか…?やっちゃダメでした?それともシャンデラ真似すんなってことですか…?」
「いえ、厳選行為や同じ手持ちなどは別に…構わないのですが」
「じゃあ何で」
「…ひとつ聞きますがあなたどうしてソファの上にいたヒトモシを連れて行こうとしたんですか?」
「え?目の前にいたから……あ、あとトウコちゃんが仲良しのポケモン同士だと早くタマゴ見つかるわよって言ってたから…ですけど」
「あなたポケモンの雄雌の区別ついてますよね?」
「なに言ってるんですかー、当たり前じゃないですかノボリさんったら!」
「そうですか、では分かっているかと思いますがそのヒトモシは両方オスです」
「ウッソォォォ!?こんなに仲良しなのに!?」
「仲が良いのと性別は関係ないでしょう」
「いや、ノボリさんこれオスとメスですって!だってほら、こっちの子の方がちょっと小さいし!」
「個体差でしょう」
「それにほら!ほら見て下さい、今ちゅってした!こっちの子が右の子にちゅって!あ、また!ねぇノボリさん!」
「ちょ…やめさせてくださいよ、何だか複雑な気持ちになるじゃないですか」
「まさかの…ヒトモシホモップル…?でも可愛いから許す」
「その二匹はボールに入れますのでこちらへ」
「え?なんでですか?」
「何でって…仲が良いのはよろしいのですがオス同士というのは、ちょっと…」
「やーだぁノボリさんたかがちびっこがちゅっちゅしてるだけじゃないですかぁ」
「そうですね、早くこちらへ」
「何でそんな頑ななんです…!?あ、これくらい仲良かったらタマゴ出来るかも」
「できません」
「フ…ノボリさん、やってみないで決め付けるのは良くないですよ」
「オス同士で生殖が可能だと?」
「出来るかもしれないじゃないですか」
「はいはい今度別のヒトモシお譲りしますから、孵化あまりの」
「イーヤー!自分で育てたいんです!自分で孵したいんですー!」
「そうですか、でしたら性別の違う子たちをお貸ししますから今日のところは諦めて下さい、ま、しッ!」
「ヤダヤダ連れてっちゃヤですぅぅこんなちゅっちゅしてる子たちを引き離すなんて私にはできません!可哀想!ノボリさんの鬼!」
「お、鬼って」
「ノボリさんはたかが性別が同じってだけでこの子たちの仲を引き裂くんですか…そうですか…」
「うっそれは」
「同性だから好きになったんじゃありません!好きになった相手がたまたま同性だったんです!」
「そ…そうですね…すみません」
「ノボリさん…!わかっていただけて私嬉しいです!じゃあ育て屋に」
「でもオス同士はタマゴできませんからね」
「えー今すごい感動的な流れだったのに!これは愛の力が奇跡を起こす的な流れだったのに!」
「映画の観過ぎですよあなた」
「あぁ、映画といえばこないだ私の好きな映画の新作出たんですけど」
「はぁ」
「誰も一緒に行くような人いなくてですねー、ひとり寂しくレイトショー行ってきました!悲しかったです!」
「レイトショーなら言って下さればわたくしお付き合い出来ましたのに」
「え、でもノボリはファンタジーとかあんまり好きじゃないよハハッってクダリさんが」
「(あの野郎)」