「ノボリさん!ノボリさん!!」


「はいはい何ですか」


「ブロマイド売りましょう?」


「誰のです」


「もちろんサブウェイマスターお二人の」


「却下です」


「即決…!!」


「当然でしょう」


「何でそうやってすぐダメっていうんですかー…」


「わたくしのせいではありませんよ。あなたが!いいですか、そういうことばかり言うせいですからね。馬鹿なことばかり…」


「いいえ!馬鹿じゃないです!これは一度検討されて然るべき議案ですよ!」


「ブロマイドがですか?」


「はい!」


「駄目です」


「まずはこちらのフリップをご覧下さい!」


「…は?」


「あ、こちらは私の提案するサブウェイマスターマスコット化企画(暫定)の資料です、どうぞ」


「はぁ?」


「それでは説明させていただきます!」


「え?え?」


「ノボリさん、この数字が何を表しているかお分かりですか?ヒントは去年の我がギアステーションの収支報告です!」


「……去年の我がギアステーションの収支金額」


「さっすがノボリさんです!」


「いえあなた全部言ってましたからね」


「さて、こちら…前年収入がこれですね?もちろん大幅な黒字です。お客様の増加によるところが多いと思われますね。何故か8月半ばから収入が一気に増えましたがそれについてはここでは省きます。えー、去年は良かったですがしかしですよ!ノボリさん、今年は車両の破損件数がすでに」


「19件」


「ええ、ダブルシングル合わせて19件、うち車両全損による取り換えが13件!まぁ!幸い一番車両費用の高いマルチトレインはまだ破損など出ていませんが…あー、これについても説明を省かせていただきます、が、えっとお手持ちの資料2ページから3ページにまとめてありますので後ほど一読下さい」


「はぁ」


「話はここからです!」


「あ、こらフリップ投げ捨てないで下さい、何かに当たったらどうするのです」


「ノボリさん聞いて下さい!いいですか、資料6ページを開いて下さい。ここ…今年に入ってすでに本年度車両予算の半分以上を消費している計算になるんです!」


「…少々マズいですね」


「とてもまずいですよ!このままじゃ今年の予算が全部車両に回っちゃいますよ!駅構内のメンテナンスがおろそかになっちゃいます!」


「ふむ」


「ですので私が提案しているのがこのサブウェイマスターマスコット化企画でー」


「ぬいぐるみでも販売するのですか」


「違いますってば。ブロマイド…あ、別にぬいぐるみも出したって良いですけど。ギアステーションのマスコットとしてサブウェイマスターを全面プッシュするんです!」


「それでしたらわたくしども既にかなり知れた存在かと存じますが」


「でも写真集とか出してないじゃないですか」


「出すわけ無いでしょう!」


「何で出さないんですか?十分な収益が見込めますって!」


「あなただけです、そんなものを欲しがるのは」


「それはどうでしょうね?資料9ページをどうぞ」


「…………」


「アンケートを取りました。『もしもサブウェイマスター関連のグッズが発売されたら購入したいと思いますか?』」


「…こんなもの、ギアステーションへいらして下さっているお客様方からの意見では肯定的なものばかりになるに決まって…」


「よくご覧になって下さい、対象は無作為に抽出したイッシュ各都市の人々1000人」


「何故こんなデータが…!」


「ヒウンの調査本部にお願いしました。すれちがいがどーとかで…えーと、かなり精度の高い記録かと」


「ぐ」


「で!で、ですよノボリさん!回答いただいた方のうち実に92%もの方が、もしもサブウェイマスターのグッズが出れば購入したいと答えて下さっています!しかも、この方々からさらにどんなグッズがいいか聞いた結果がこちら10ページ」


「写真…」


「そう!みなさんなかなか表に姿を現さないサブウェイマスターがどんな人かとっても興味があるんですよ!」


「雑誌の取材などにはこたえておりますよ?」


「あんなの数える程度じゃないですか…!みなさんもっとお二人を身近に感じたいんですって!」


「し、しかしトレインを勝ち抜いた挑戦者にだけ与えられるべきサブウェイマスターの貴重性というものがですね…」


「雑誌出てるじゃないですか。写真集出したって構わないじゃないですか。それにホラ、生身と対面できるという部分は失われてません!」


「う…で、ですが…」


「ね!ノボリさんブロマイド出しましょう!ギアステーションの為ですから!ねっねっ」


「ヒッ、ボボボボタンに手をかけないで下さ…クダリー!クダリ来て下さいましぃぃぃ!!」


「あぁ、無駄ですよ…だってさっきクダリさんにはバケツアイス渡してきましたからね…。流石のクダリさんでもこの時間であの量を食べきるのは無理」


「呼んだ?」


「クダリ!助かりました!」


「きゃー君たちナニやってんのえっちー」


「ナニやってませんよクダリさんも剥くぞハイ、コート脱いで」


「なに、また無理矢理写真撮られてるのノボリ。飽きないねぇ」


「いえー、これは無理矢理じゃなくギアステーションの為にノボリさん自ら脱いで下さって」


「ません!」


「ギアステーションの為?どういうこと?」


「ブロマイド売るんです!」


「売りません!」


「うふ、うふふ…ノボリさんのブロマイド…堂々と撮影…フヒヒ」


「え、君それでいいの?」


「何がです?」


「写真を売るってことは君だけじゃなくなっちゃうんだよ、ノボリの写真持ってるの」


「ハッ…!!」


「希少価値下がっちゃうね」


「だ、だめです!」


「そんなのつまんないでしょ?」


「はい!」


「じゃあブロマイド売るのは」


「イエッサー、やめた方がいいです!」


「そうだよね」


「クダリ…!いつの間にそんなに立派になって」


「はやくシャツ着たら?」


「あっ待ってください半裸撮ってから」


「却下です!」


「ちぇ」


「また今度だね!」


「今度など永遠に来ません」


「でもどーするんです、予算。カツカツですよー」


「なんだー!そう言う事。君らは心配しなくっていいのに」


「だって…」


「いざとなったらアデクさんとこ強いりにいくし」


「アデクさん?どちらのアデクさんですか?」


「チャンピオンの」


「チャンピオンの!?」


「非公式戦だけどね。小判持ちでリーグ一週間もいりびたればよゆーよゆー」


「か…カツアゲだ…!!」


「ハン。倒される方が悪い」


「クダリさん怖ッ」


「っと、小判なしでも賭け金あげて下さいますしね」


「そんなことできるんですか?あ、ていうかノボリさんホントにがっちり着こみやがりましたねこのクソ暑いのに。そんなに写真嫌いですか」


「ちょっとした取引してね、アデクさんと」


「取引?」


「そー、リーグの勉強会?を兼ねてー、四天王に公開した試合すんの。何故かコートは脱いでワイシャツで戦うんだけど。そうすると賭け金5倍にしてくれるんだー。小判との併用で10倍賞金!」


「は…?」


「シキミさまなどいつも熱心にバトルレコーダーを回していらっしゃって…あ、シキミさんというのは四天王の方なのですが」


「てゆーかノボリいつもずぶぬれになるよね!」


「ええ、なみのりを多用してくるものですからね…」


「え?イッシュのチャンピオンは水タイプ使いなんですか?」


「マルチタイプですね。ああでもわたくしたちと勝負するときは非公式戦ですので普段の手持ちと違うようです」


「えっていうかずぶぬれって」


「びったびたにされるんだよ、多分あれは僕らの戦意喪失を狙ってるんだね!」


「クダリさん私ちょっとリーグ行ってきます」


「何しに?」


「データ貰…あっ違くて、その、バトルの勉強のために!」


「いけません、仕事があるでしょう」

「くッ…!もしもしトウコちゃん?あのね、リーグのシキミさんって人にびしょ濡れデータ下さいって伝えて!サブウェイマスターの!あっちょっとノボリさん返して下さい!」


「何言ってるんです、あなたって人は…!!もしもし?トウコ様ですか?申し訳ありませんわたくしの部下がおかしなこと…えっ?ちょうどよかった?何がです?え、シキミ様?どうしてトウコ様と………は?リーグに?何故、」


「はじめましてシキミさんデータ下さーい!!」


「黙りなさい!クダリ、押さえつけておいて下さいまし!…もしもし?大変失礼いたしまし…えっ?なんです?怪しい会話に聞こえた?何がでございますか?」


「ノボリ、僕誘拐犯の気分」


「シキミ様?あの、ですのでデータなぞいりませ」


「むぐ、トウコちゃん経由で送って下さぁぁい!!うがっ、むぅ!」


「シキミ様ー!?でっですから先ほどのはうちの部下の戯言ですのでお気になさらず!これは少々頭の回線がおかしなもので…えっ?いいお友達になれそうな気がする?何を言ってらっしゃるので!?」


「んんんぐ、ぷは、シキミさん今度一緒にご飯食べに行きましょもがっ」


「しー、ノボリが切れちゃう。脳の血管的な意味で」


「シキミ様!?ちょ…いけませんよ!え?トウコ様から聞いた?何をです?………は、これがわたくしの写真を持っていると?」


「あ、やばいノボリやばい」


「そ…!!……切られてしまいました」


「はぁっ!もう、クダリさん力強すぎです、いったいなー」


「…ちょっとそこに正座なさい」


「えっヤです」


「いいからそこに正座なさい」


「ソファの上でもいいですか?」


「床」


「えー…」


「仕置きです。クダリ、あれを持って来なさい」


「あれって何ですか、ギザギザの板の上に正座して重しを抱くとかそういう、拷問的な」


「あなたが抱くのはこれです」


「……紙ですね!重しにもならないですアッハハ」


「今日じゅうにすべて仕上げておくように」


「無理です!」

「いいえ、わたくしはあなたになら出来ると信じておりますよ…先ほどの資料は素晴らしかったです、内容はともかく」


「ノボリさんノボリさんこんなときにデレ頂いても嬉しくないです」


「ではよろしく頼みましたよ。…それが終わるまで今日は帰れないと思いなさい」


「残業反対です…!!」


「まーまー。僕もあとで手伝うから、ねっ。…ノボリ、可哀想じゃんかこんないっぱい」


「いえ、あれはその気になればあのくらい出来るのですよ…ほら」


「なにこれ。誰が作ったの」


「彼女が」


「うそん。すごいね変態って」


「ちょっとぉ、クダリさん変態って何ですか!聞こえてますよ!」


「早くやりなさい」





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