「経費で」
「だめ」
「えー!何でですか!お客さん来た時用のお茶菓子ですよ!」
「いやだってこれおかしいもん!こっちのクッキーとかマドレーヌの詰め合わせはいいよ?この水羊羹セットもいいよ?でもこれ!これおかしいでしょ!お客さんに出すお茶菓子でポップコーンとか棒アイスはおかしい!」
「お、おかしくないです!最近暑いですし棒アイスをご所望の方もいるはずです!」
「とにかくこれは棚に戻してきて、ハイ」
「む…ちぇ」
「もう!」
「クダリ、経費で」
「…だめ」
「なっ何故です!ギアステーションはあのままだとあまりにも殺風景でしょう!お客様をお迎えするにはさみしすぎるでしょう!」
「だめ!そんなの必要ないでしょ!百歩譲ってその1/1000スケール金メッキマルチトレイン模型は威厳があっていいとして、そっちのシングルトレインモデルのプラモはいらない!」
「戻してきましたよ―…あ、なんですかそれノボリさん超かっこいいですね」
「そうでしょう、1/500スケールシングルトレインです」
「元あった棚に戻してきて」
「ウワァァ見て下さいノボリさん!あっちに1/25000スケールのギアステーション模型ありますよ!すごいすごい、カナワタウンの車庫模型もついてる!」
「何ですって!クダリ!ギアステーションを預かる者としてこれはもう購入するしかありませんよ!」
「だめ」
「クダリさんのけち…」
「けち」
「ノボリ幼児退行ダメ、ゼッタイ」
「おや失礼」
「クダリさぁん、じゃあ帰りにパフェくらい食べてきましょうよぉ、棒アイス我慢するからねぇねぇ」
「えー」
「わたくし早くギアステーションに帰りたいです」
「ノボリさん知ってますか、ここの5階にある喫茶店ね、隠れた名店らしいんですけどね、いま鉄道フェアやってるんですよ。パフェが鉄道仕様らしいんですよ。どんななのか見たくありませんか」
「クダリ!わたくしパフェが食べたいですパフェ!早く行きましょう!ほらお会計さっさと済ませて来て下さいまし!」
「僕もう帰りたい…」
「じゃん」
「何?」
「キレイでしょう?昨日草むらで拾ったんです、つやっつやきらきら!の、石!」
「へー………あ、これって」
「なんか三日月みたいな形してるし、不思議ー!」
「ノボリー、これさぁ」
「打製石器にも似たこの表面!つややかで鋭利なように見えて太陽光を優しく反射するこのなめらかさ…かっこいい…!」
「おや、つきのいしではないですか」
「え、月?月の石は違うでしょう、隕石ってもっとボコボコしてますもん」
「隕石の方ではございません。進化の石でございます。あなた仮にもわたくしたちの部下ですのに……本当馬鹿ですねぇ」
「何しみじみしてんですか、表出ますかノボリさんコラ」
「ノボリ言い過ぎ、馬鹿だなんて言ったら駄目だよ」
「く、クダリさん…!一生ついてきます!」
「この子は馬鹿なんじゃないよ、ただ脳みそへ蓄積しているあらゆるデータのうち一般常識っていう情報に著しく乏しいだけ」
「ちょ…!?そんな罵倒のされ方初めてですよ!?馬鹿って言われる方がいいー!」
「ハン」
「その見下したような視線やめて下さいよ…!」