「何を作っていらっしゃるのですか?」
「あ、ノボリさん!えっと、これです」
「花の…冠ですか?」
「うーん、そうなるんですかね?」
「違うのですか?」
「よく分かりません」
「何故よくわからないのですか…」
「ただ目的もなく編んでみたかっただけだからです!あの、さっき散歩に行ったんですけどね?」
「はい」
「ミュージカルの前で知らないお兄さんに花束頂きまして」
「…花束?」
「遠慮したんですけど是非って言うし、それに綺麗だったから」
「で、持ち帰って編んでいたと」
「はい。でも…やっぱ私じゃうまく編めないみたいですねー!ひしゃげちゃいました!あははー」
「ここを下に通すんですよ、それで次のを付け足して」
「これですか?」
「ですよ」
「こうですかー?」
「そうです、お上手です」
「えへへ、ノボリさんに褒められるの何年ぶりでしょうね!」
「何年ぶりということはないでしょうに。そう、同じようにまた次を」
「次は黄色いの付けます!」
「おや、可愛らしいですね」
「で、こーう、ですか?」
「そうです」
「わぁー、ノボリさんと女の子遊び出来るとは思いませんでした!楽しーい!」
「おっ…!?……別に、クダリが小さい頃やっていたことを見よう見まねただけです」
「まぁまぁ照れないで!良いと思いますよ、ノボリさんお花似合うし!かわいいし!」
「男に言うほめ言葉ではありませんよ、それ」
「ノボリさん、これ最後輪っかにするにはどうしたらいいんですかー?」
「端を合わせて、花を取って、ここに巻いて…はい、そうです」
「でっきたー!ありがとうございます!」
「いえいえ」
「おお、かわいい!」
「…少し冠には大きくありませんか?」
「うっ!た、たしかに…?まぁまぁ細かい事はいいじゃないですか!ノボリさん、ハイ!」
「え?」
「どうぞ!」
「わたくしに下さるのですか?」
「そうですよ、はい」
「あ、ありがとうざいま…」
「あららー、やっぱり相当大きかったですね!あはは、首輪みたい!」
「首輪ですか…」
「…うん、すいませんでした。取りますね」
「結構です」
「え、気に入ったんですか?」
「残っているお花、3本ほど頂いてもよろしいですか?」
「あっ、ハイどうぞー?3本と言わず全部持ってってもいいですよ!」
「そんなには要りません」
「…?編むんですか?」
「手を」
「はい?はい」
「こちらでなく、左手を」
「はいー?何ですか?……お花のゆびわ?」
「…はい、できました」
「わぁー、かわいい!」
「お礼です」
「え?何の…あ、まさか首輪のですか!うひゃ、ありがとうございます!」
「それ、枯れてしまうまで外さないで下さいましね」
「それは無茶ってもんですよノボリさん…!ノボリさんもその首輪枯れるまで外さないってなら付けてますけどー、うぷぷ!」
「……マルチトレイン、行ってまいります」
「あ、ちょっとノボリさん!首輪外さないと!」
「あなたもそろそろ昼休憩終了でしょう、戻りなさい」
「聞いてますかノボリさんってば、首輪!外さなきゃですよ!」
「行ってまいりますね」
「ノボリさんー!?」
「わぁノボリどうしたの、ストレス?」
「春ですので」
「イメチェンってレベルじゃないよねそれ、サブウェイマスターとしての威厳どこいっちゃったのって感じ」
「春ですので」