「ノボリさん聞いて下さい」
「何でしょう」
「私は凄いことに気付きました」
「はい」
「抱き枕に向かって『来いよ、抱いてやんぜ』って言いながら抱きつくとすごく虚しいです」
「でしょうね」
「いやぁもう少し楽しい気分になれるかと思ったんですけどねー!」
「あなたの考えることはいつも可笑しなものばかりですね」
「おかしくないですよ、普通です!」
「普通?どこが普通なのですか?どこが?」
「ええー、そうですねぇ…他の人を例に挙げて言いますと、ええと…クダリさんもこの間仮眠室で枕に向かって何か喋ってましたよ。証拠テープありますけど聞きますか?」
「テープって…あなたクダリのストーカーですか…?ストーキング行為は犯罪ですよ」
「違います、上司ウォッチングです。それにこれは監視カメラのですからね、私が仕掛けたわけじゃないですからね!」
「そうですか、何故ただの一駅員であるあなたが監視カメラのデータなぞ持っているのです?」
「……さぁて午後もばりばり働きますよー!!よーし頑張るぞ!」
「お待ちなさいまし!納得の行く説明を求めます!」
「べっ別に悪いことしてないですもん!ちょっと警備員さんと仲良くなってデータ写させてもらっただけですもん!」
「どいつですかその警備員は!あなたとそいつと揃って減給にして差し上げます!」
「ヤダァァァァァ!」
「人間だったんだ」
「…何言ってんですかクダリさん、厨二病ですか?」
「人間だったんだよ」
「クダリさん、目の焦点が合ってませんよ。大丈夫ですか?」
「………」
「………」
「……ん?」
「いや、ん?じゃなくて」
「あれ、何の話してたっけ。君が牛乳飲み過ぎた話だっけ?」
「そんな話してませんよ!そもそも会話してませんでしたよ!クダリさんが突然人間がどうとか厨二なこと言いだしただけです!」
「ちゅうに?なにそれ。僕そんなこと言った?」
「言いました。二回も言いました。」
「うそー。聞き間違いじゃないの?」
「いいや、しかとこの耳で聞きましたよ!」
「えー、じゃあちょっと耳貸してみて」
「なんですか?何ですか?」
「ふー」
「いひゃひゃひゃくすぐったい!」
「へへへー!」
「なんですかもう、クダリさんは悪戯っこですね!」
「君にそんなこと言われる日が来るとは思わなかったよ!」