「わたくしはあなたさまを愛しております。愛しております。他のどんな男よりもあなたさまを愛しております。あなたさまだけを愛しております。世界で一番あなたさまが大切なのでございます」


彼女をきつく抱きしめながら繰り返し繰り返し繰り返し、他の言葉など知らぬように、わたくしは愛を囁きます。わたくしよりも小さなその体に、すがりつくように腕をまわして彼女の全身を抱き込むと、ぴくりとわずかに身じろぎをなさいました。


「愛しております。あなたさまの為であればすべてなげうっても構いません。愛しております。決して忘れないでくださいまし。わたくしは、あなたさまを愛しております。心から愛しております」


どくりどくりと彼女の心音が伝わってまいります。たったそれだけで、わたくしの心は熱い何かでいっぱいに満たされました。くたっとこちらに寄りかかってきている彼女の目元へ指を這わせると、びくりとまたその体は跳ねました。


「呼んでくださいまし。わたくしの名前を、ノボリ、と。呼んでくださいまし。愛しております。あなたさまを愛しております。どうか、わたくしの名前を呼んでくださいまし」

かすかに動いた口元へ耳を寄せると、かすれた声で、彼女はわたくしの名前を呼んで下さいました。あぁ!何という至福でしょう!彼女の唇が、わたくしの名前を紡いだのです!ブラボー!あぁ!あぁ!


「愛しております。愛しております。あなたさまはわたくしを愛しては下さらないのでしょうか?愛しております。あなたさまの愛の一滴すら、わたくしには零していただけませんか?愛しております。愛しております、愛して、」
「あい、して…ます。愛してます、愛してます、ノボリさん」


ひどくちいさな声でしたが、わたくしは確かにそのつぶやきをこの耳で拾うことができました。今までの人生で最高の瞬間でございます!思わず彼女の頭をかき抱くと、繰り返し繰り返し繰り返し愛していると紡ぐその愛らしい唇に、ひとつふたつみっつと口づけを落としました。おや、最初のキスはあなたさまと見詰め合ってからしたかったのですが、どうもわたくし浮かれているようでございます。せっかちでいけない。彼女の後頭部に手を回し、目隠しにしていた黒いハンカチの結び目をほどいて差し上げました。数日ぶりに視界に入れた彼女の両の目は、やはりわたくしの心を捕えて離しません。

「愛しております」


頬に、瞼に、鼻先に、額に、小さくキスをしながら、わたくしは彼女の腕と足の自由を奪うナイロンロープも解きました。すっかり紫色に痕の付いてしまったそこを心底痛ましくしかし愛おしく思いながら指で軽くなぞります。彼女はもう体を跳ねさせたりしませんでした。


「愛して下さるのですか?」
「あいしています、ノボリさん」


彼女の頬を両手で包みこんで、もう一度キスを交わしました。
目を閉じてわたくしを受け入れて下さるあなたさまはなんて可愛らしいのでしょう。その閉じた瞳から涙が一滴こぼれたのには、気づかないフリをいたしました。





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