いちげきひっさつよりは低い






「ひとつだけ、わさびが入っています」


「……全て緑色に見えるのですが」


「残りの5個はずんだです!わさびと似ててドッキドキですよね!さあどうぞ選んでください」


「僕いらないからふたりで食べて」


「のーん!クダリさん何つまらないこと言ってるんですか!せっかく買ってきたのに」


「せっかく買ってくるならもっと普通のにしてよ……!なんでわさび大副なんか買っちゃうかなぁ!?」


「わさび大福じゃないです。ずんだ大福です。メインはずんだの方!あくまでわさびはハズレのおまけです!……うん?アタリのおまけかな?ハズレがわさび?アタリがわさび?どっちだと思います?」


「知らない」


「あ、わたくしアタリでした。ごちそうさまでした」


「うそっ!ノボリわさび!?」


「えー!ノボリさんいきなりわさびですか!?」


「いえ、アタリのずんだでした」


「ふがっ、紛らわしいですよノボリさん……!ちっ」


「君チッて言ったの今」


「さっクダリさんもいってみましょうか!これなんか良いんじゃないですか、何か他のより禍々しい色してる気がします」


「自分でそれ食べたら」


「嫌です」


「えー…じゃあノボリさんに……」


「……」


「……ノボリ、口開けてないで自分で食べたら良いと思う」


「わたくしに食べさせたいならあなたたちが食べさせて下さいまし、常識です」


「どこの地方の常識ですかソレ。はいあーん」


「あー」


「ポケモンに餌あげてるみたいだね。見てて悲しくなってくるよ」


「むぐ……あたり、です。ずんだです」


「えー!絶対これだと思ったのにー!」


「6個入りならひとり2つですよね、わたくしノルマクリアですよね」


「いえいえよろしければ2つと言わず3つと言わず4つでも5つでも6つでも」


「いりません」


「く、クダリさんどうぞー……」


「いやいやいや」


「いやいやいや」


「わたくしお茶淹れてきますね」


「あぁっ!ノボリさんいいんですよお茶くみなんてなさらず!そんなこと下っ端のわたしがやりますからどうぞノボリさんは座って大福でも召しあがってて下さい!」


「いえいえいえわたくしもう充分頂きましたからどうぞあとはあなた方でごゆっくり」


「わたし大福よりおまんじゅう派なので!どうぞノボリさんわたしの分まで!」


「奇遇ですねわたくしも大福よりマカロン派なのです申し訳ありませんが!」


「何が奇遇なんですか!?そのふたつバチュルの体長ほども似てませんけど!?まっマカロンとかお洒落気取ってるんですかスイーツ系男子ですか!急須貸して下さいよわたしがお茶淹れますってば!」


「ええいいいからあなたはわさ……大福食べてなさい!お茶はわたくしが淹れると言っております!」


「今ノボリさんわさびって言いかけましたよねぇぇぇ!?不吉なこと言わないで下さいよぉぉ!」


「……あ、これずんだだった僕ラッキー。あといっこどれにしようかな、三分の二の確率でセーフでしょ。命中率はいちげきひっさつ並み……よしいける」


「イヤァァァァ!?クダリさん何アタリ引いてるんですか!わさび食べて下さいよわさび!わさび!」


「嫌だよ誰が好き好んでわさび大福なんてゲテモノ選ぶの」


「く、クダリさん前に僕何にでもわさびつけて食べるんだーって言ってたじゃないですか」


「言ってないよ!」


「はいお茶がはいりましたよ」


「……ノボリさん、緑茶ってそんなボコボコに沸かしたお湯で淹れちゃ駄目なんですよ」


「存じておりますが。でもほら、わさびで大ダメージを負った舌にはこのくらい熱い方がいいでしょう?戦闘不能に追い込む的な意味で」


「ノボリさんめ確信犯ですかぁぁぁぁ!」


「………ったー!これもずんだ!セーフ!僕おーわりっ!」


「えっ?何?聞いてませんでしたけどクダリさん何ですって?わさびに当たったって言いましたか今?言いましたよね?そうですよね?」


「あーそうだねそうだね僕がわさび当たったねーだから君は何も心配しないでこの2つの大福を一気に口に突っ込みなよ」


「ちょぉぉ!ふっふざけ……!どっちかがわさびじゃないですかどう転んでもわたしがわさびじゃないですか!いりません!」


「はいどうぞ、お茶」


「あ、ありがとうございますー……じゃなくて!」


「どうしたのですか、早く食べないと冷めてしまいますよ、大福」


「大福は冷めるようなものじゃありませんけど」


「早く食べなよほらほら」


「ひぃぃぃ……!……あ、そうだ消費期限切れるまで冷蔵庫に」


「食べものを粗末にしないのが君の良いところだよね!僕知ってるよ!」


「うがっ、そそそそこを突っつかれるとっ……!」


「自分で撒いた種ですよ」


「クソッ和菓子屋さんのおばちゃんめ!」


「いいやそんなものを買った君が悪い」


「え、えー、えー……ほんとにこれ、あれですか、食べなきゃダメですかこれ」


「捨てるの?わさびとはいえ仮にもお菓子だよ?」


「う、うぐぁぁぁ……!わかりましたよ!食べます!食べますとも!」


「お茶の熱いうちにどうぞ」


「早く!早く!」


「ひっひっひぃぃ、ひぃ……!にっ二分の一、よし!……よーし、えっと、よーし」


「早くしてよ」


「お疲れさんでーす」


「あぁぁぁクラウドさん!いい所にっ大福ひとつどうぞ!」


「あっなまえ卑怯!」


「卑怯……?ボスたち食べてへんならわしは別に」


「いいえ、ノボリさんとクダリさんはもう食べたんでいいんですよぉアハッどうぞどうぞクラウドさん!何なら両方どうぞ、お疲れみたいだし糖分補給は大事ですよ!」


「えー?はは、いっこでええわありがとさん」


「ハイ!」


「……お、なんやこれ緑の餡はいっとるなー、うまいやん。ちょっと目ぇ覚めた気がするわ」


「ずんだだそうですよ」


「ずんだですか……?ふーん、なまえごちそうさん。じゃあわしシングル行ってきますわ」


「いってらっしゃい!」


「…………わぁークラウドさんに喜んでもらえてよかったなーあはは」


「なまえ?どうぞ、一分の一です」


「なまえなまえ、からしかけたら辛さが中和されるかもよ?かけていい?」


「何の中和ですか絶対いりません。……はぁ、わさび、これわさび、うぇぇ……」


「……ハァー。わたくしがっかりです……まさか自分の部下がこんな腰ぬけチキンだったとは」


「ウッ、そっそれは」


「僕もがっかり……男だったらガブッといきなよガブッと」


「わたし女ですけど!?……う、うぅぅー、わかりました!わたしが買ってきたんです、わたしが食べます。食べます……!」


「よし!大丈夫だよ任せて、吐き出さないようにちゃんと口押えててあげるからね!」


「いただきます……!っむ、むぐ……。……んぐ」


「どう?どうなの?まずいの……?あのね、ホントにヤバかったら出してもいいよ?」


「……ぐッゥ、げ、ほッ!ひッぅ、ん゛ん゛っ!?」


「なまえほらティッシュ!ぺってしてしまいなさい!」


「ん、ぐっ……、……ッあ゛ー……」


「なまえ?大丈夫?」


「は、はは……詰まるかと思った、あは。……あの、何か……普通に甘かったんですけど」


「え?」


「えっ……?何で?だって」


「箱には6個中1個がわさびと書いてありますが……」


「不良品?」


「えー、そんなことあるのかなぁ」


「だって……あっ」


「何?どしたの?今更からくなってきた?」


「……ねぇねぇノボリさん、クラウドさん目の下黒かったですね」


「……ノボリ、そういえば最近クラウド勤務時間外は昼夜問わず厳選してるって、ジャッジ君が」


「なまえ!大至急クラウドを確保してきなさい!まだシングルトレインは出発まで時間があるはずです!」


「い、イエッサー!いってきます!」


「クダリはトトメスなりラムセスなりを捕まえてきてクラウドの代理を立ててくるように!」


「うっうんわかった!」


「ッギャアー!?ノボリさん大変です!ドアの外にクラウドさんがっ力尽きて倒れてますー!あぁっ手に食べかけの大福まだ握ったまんまで…!」


「わたくしが運びましょう、なまえは仮眠室のドア開けて下さい」


「あぁクラウドさん、倒れるまで睡眠削ったら駄目じゃないですか……!そんな限界になるまで厳選なんかっ、ワーカホリックにもほどが……うわ凄いわさびくさい」


「とどめ刺したのその大福じゃないの?」








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