すなおひねくれ
「うわー。色気づいてんの?なに?似合わないんだけど今日のチーク。無駄金使って御苦労なことだね。グロスまで変えちゃって!男でも出来たの?」
「ノボリさんおはようございまーす」
「おはようございます」
「ちょっと!何でノボリだけなの!?僕に挨拶ないんだけど!?」
「ちっ……おはようございますクダリさん今日もよくまわるお口ですね!」
「うんおはよう、で?」
「わたくしシングルトレインの点検に行ってまいりますね」
「あ、行ってらっしゃい」
「いってらっしゃいノボリさん!……でってなんですか?」
「質問に答えろってことだよ」
「え?質問って?」
「あっは、ありえなーいよく考えたらこんな記憶力のない馬鹿にそんなのあるわけないよね僕ってばうっかりー」
「何がですか?」
「ないよーほんとないよありえないよこんなつるぺた」
「つるぺたって言わないでくださいよクダリさんのあほー!セクハラって人事課に届け出しますよ!」
「人事も僕らだもん」
「……………そうでしたね」
「で?」
「え、何が?」
「とぼけないではっきり言いなよ」
「…………何をですか?」
「男が出来たのかって聞いてんだけど僕」
「えっそんなん聞かれてないですよね?」
「エッはぐらかすって事はまさかこんなちんちくりんの生意気なまえに惚れる馬鹿がいたってこと!?男が出来たの!?ヤダーありえなーい」
「クダリさんうざっ」
「早く答えて!」
「えぇぇ自己完結したのかと思ったらこれまだ質問続いてたんだ!ていうか何で急にそんなこと聞くんですか?私普段となんか違ってました?」
「はぐらかさないでって言ってる!イエスオアノーで早く答える!恋人が出来たの!?答える!」
「ォェックダリさん首しまってますしまってま、す!手、はな、し、てー!……げふごほ、げふん!」
「あっ、ごめ、……なまえが早く答えないでニヤニヤしてるのが悪い!生意気!」
「ニヤニヤしてないですし!何ですかもう!」
「だ、だから!なまえちょっと今日違うから、だから、彼氏でも出来たのって聞いてあげてるの!僕が!わ、話題作りのために!」
「話題作りとかいいんで仕事しちゃいたいんですけど」
「は、ぼく、僕がせっかく、部下とコミュニケーション取ってやろうとしてるのになまえ、もっと上司とにこやかに話すべき!」
「ノボリさんとはにこにこしながら話してるんで大丈夫です!お気づかいなく!」
「僕も上司!」
「あーそうですねーそんじゃ私持ち場ついてきますねーまだちょっと早いけどお客さん来てるかもしれないですからねー」
「だ、だめ!まだ話終わってない!」
「もぉぉなんなんですか!手短にお願いします!」
「だから!だから、なんでなまえお化粧かえたのってさっきから聞いてるでしょ!」
「いたいいたいいたいつむじ押さないで下さい髪ぐしゃぐしゃになっちゃう背縮んじゃう!」
「早く答える」
「うー……何でって何なんですかぁ……ただ新しいの買ったから使っただけですって……うぅぅ痛かった…」
「なんとなく変えただけってこと?」
「だからそうですってば!」
「ふ、ふーん。………なんだ、あっそー!別に、僕最初っからそうじゃないかって思ってたけどね!なまえに恋人なんかできるわけないし!」
「なんですかソレ超失礼なんですけど」
「ていうかそれ色変だよ。似合ってないよ、プッ」
「前のとほとんど色変えてないですよ。それにこれはショップのお姉さんが直々に選んでくれた奴ですもん、前のよりは合ってるはずですー!」
「ハ、君そんなん信じて買っちゃったんだ、高いの売り付けようとしたに決まってるじゃん」
「違いますもん!前使ってたのと値段ほとんど変わんない奴ですもん!こっちの方がお似合いですよって言ってくれたんですもん!」
「あーあーあーばかだばかだー薄給のクセに似合ってない化粧品買って散財とかほんとなまえってばか」
「薄給って思ってるなら給料上げて下さいよー」
「ほんとなまえってばか!」
「いたいいたいいたいほっぺぐりぐりしないで下さい!ファンデ落ちる!」
「うわ、指に肌色のついた」
「だから言ったじゃないですか…」
「やだーばっちい、なまえのついたとかさいあく」
「クダリさんわたしのこといじめて楽しいですか…?」
「なまえが化粧なんかしてるから僕の手袋よごれた!」
「すっぴんで職場来てほしいんですか……。洗濯すれば取れますよ、ファンデだもん」
「肌がさがさなの化粧で隠してんでしょ」
「ち、違いますし!ちゃんとケアしてるもん!」
「うそだ、だってちょっと今日化粧うまくないもん」
「ひとの粗探しやめてくださいよぉぉぉ」
「ほんとなまえってどうしようもないね!ふん!」
「ううっ私だって肌荒れ、したくてしてるんじゃないです……」
「不健康な食生活してるからそうなる!どうせ今日のお昼ごはんもコンビニサラダでしょ」
「べ、べつにいいじゃないですか……」
「しょうがないから僕のお弁当、ちょっとだけ分けてあげる!昼休み僕のとこ来なさい!」
「いやいいです」
「僕が、来いって、行ってる。なまえ」
「謹んで伺わせて頂きます」
「それでいい」
「………いやでもクダリさん、クダリさんのお弁当美味しいですけど毎日分けて頂くのは申し訳ないかなーって思うんですけど。わざわざ私の分まで作るの大変じゃ、」
「べっべっ別に君の為にわざわざ作ったりしてない!僕らのお弁当作ってるときにたまたま毎日ちょっと予想より多く作りすぎちゃってるだけ!勘違いしないで!思いあがりも甚だしいよ!!」
「え、甚だしいってほんとに会話で使う人初めて見た!」
「ウルサイ早く持ち場について!」
「クダリさんが引き止めたクセにー!」
「ウルサイウルサイ!」
「あ、クダリさんクダリさん、昨日のきんぴら美味しかったです」
「え!じゃあまた作…………僕の為だから!僕が!きんぴら好きだから作るんだからね!」
「やったークダリさんのきんぴらー!」
「なっなななに喜んでるの!君の為じゃない!」
「えー違いますよぅクダリさんと好みが一緒だったことに喜んでるんですよぅ」
「はっ、はぁ!?いみわか、意味わかんないし!僕君と好み全然違うから!一緒にしないで!きんぴらとか好きじゃないし!」
「え………じゃあお弁当に入れてくれないんですか…?」
「いっ入れるよ!入れるけどそれは、その、ノボリが好きだからきんぴら入れるだけだし!」
「わーい!でもねクダリさん、別にこれお弁当催促してるわけじゃないですからね、本気にしないでいいですよ!明日こそはちゃんとしたの自分で持ってきますから」
「ハンッ、なまえが朝はやおきしてお弁当なんて作れるわけない」
「いやサラダ止めるってだけでコンビニのお弁当買うつもりですけど」
「こんびにべんとう………そ、そんなの食べるから肌荒れる!」
「だってはやおきしてお弁当作るとか出来ない……」
「だから僕が作ってきてあげてるじゃん」
「…………え、クダリさんやっぱわざわざ私の分も用意してくれて、」
「違う」
「だっていっつもクダリさんお弁当箱みっつ用意して、」
「違うもん、僕がふたつ食べようと思って持ってきてるんだもん!」
「いたいいたいいたいほっぺ引っ張らないでー!」
「また肌色の手袋についた!チークまでついた!どうしてくれんのさ!」
「クダリさんが引っ張るのが悪いんじゃないですかぁぁ!」
「………僕、前の色の方がよかった……唇も、前のの方が好き」
「ぴぃぃいたいー……じゃあ明日は前のに戻してきます……」
「そうして。……明日のお弁当、おかず何がいい?何が好き?」
「え、わたしの好きな物作ってくれるんですか?」
「か、勘違いしないでっていってるでしょ!あれだから、おかず毎日考えるの大変だから、だから君の意見も聞いてやろうかって思っただけ!それだけだから!」
「いたいいたいいたい鼻がちぎれるー!!!」