自分の限界は知ろうね








「やはり我がギアステーションも常連のお客さま方よりのご愛顧に甘んじず新規のお客様を積極的に集めていくよう方向転換した方がいいと思うんですよね。もちろん常連客のみなさま方も大事なお客様ですけれどもほら、顔なじみばかりで一見さまお断りという雰囲気はよろしくないと思うんですよ、半地下に駅を構えているという閉塞感もあることですしね、とっつきにくい印象を与えてしまってはいませんか私たち。どう思われますかノボリさん」

「もう君は飲まない方がいいと思う」

「すいませんビール3本追加でお願いします、ええ瓶で、はい。あと日本酒ロックで、はい」

「カナワにサブウェイ系列の地下住宅を建設するのはいかがでしょう、ギアステーションまで一本で行けるアクセスの良さに加えて車両基地はすぐそば。あ、それだったらヒウンの海底に系列ホテルを作ってしまうのもいいかもしれませんね、窓から外を見たら日光揺らぐ海底だなんて美しいと思いませんか。駅から直接受け付けへ入れるよう改札をエントランスホールに作ってしまえばいいです、ヒウンシティ海底ビジネスホテルです、どうですかノボリさん」

「知りません」

「なまえお水飲んで!君酔ってるよ!」

「う、うぅぅ………どうせ…どうせ私の頭なんて愚図なんですよぉぉぉぉきっと脳みその代わりに白みそとかが詰まってるんだ、だからこんなに愚図なんだ、ぐすっぐす、ギアステーションをもっと多くの人に利用してもらいたいなって思ってもこんな事しか考え付けないんですよぉぉぉごめんなさい生きててごめんなさい、うぇっうぇっ」

「泣かないでよ!ほらもうノボリが構ってあげないからなまえがめんどくさいことになっちゃったじゃん」

「めんどくさいって言われた、うぐっうぐっ」

「わかりましたよ構って差し上げます、なまえ、はいどうぞビール」

「ちょっと!これ以上飲ませないでよ!」

「うっうっうっ、うー」

「きーみの!ちょっといいトコ見てみたい!そーれイッキ!イッキ!イッキ!イッキ!でございま、痛ッ!ちょ、クダリどうして叩くのです」

「女の子に一気飲みなんてさせんじゃないよノボリ!ていうか危ないでしょ!」

「うー、っく、ひっく、イッキ、できない……ひっく。ごめんなさい愚図でごめんなさい、ひぐ、うっ」

「なんで君はお酒入るとネガティブモードになるの……」

「変な宗教団体に絡まれるのも電車のダイヤが乱れるのもみんな私が愚図だからなんですぅぅ、クダリさん捨てないでぇぇぇ、めそ、めそ」

「あぁそうだねハイハイとりあえずお水飲んでくれるかななまえ」

「ん、ぐっ…ん、んう」

「……あ、クダリそれわたくしの日本酒ですよ」

「え」

「…………っぷはー!…………………エヘッ」

「なまえ?だ、だいじょうぶ……?」

「うふ、うふうふ、うふふふふっうふ、うふうふ、うへへへ、うへへへへえへへへへへへへ」

「あらあら」

「あらあらじゃないよノボリの馬鹿ー!」

「なんですか、わたくしのせいではないでしょう飲ませたのはクダリで、」

「クダリさん!」

「ひっ、な、なに?」

「いつもお疲れ様ですクダリさん」

「は、え?え、ど、どうも」

「そんないい子なクダリさんはよしよしをしてあげましょう」

「いやいらないよ」

「よしよし、ついでにぎゅー」

「なまえうざい……」

「はぁまったく、いつの間にこんなに大きくなっちゃったのかしら時間の過ぎるのは速いわ」

「君は僕の母親か」

「いつのまにこんな、ひっく大きく、」

「あ、ちょっと何でまた泣くのー!?」

「ふ、うっ、いつかお嫁さん連れてきてそれで、で、出ていっちゃうのね、っひ、立派になって、うっく、あぁでも少し、悲しいわっ、ひぐ」

「ノボリこの子なんとかしてよ!」

「脱げとか言われないだけいつもより害は少ないじゃないですか」

「ノボリさんも、ぐす、こんなに背も伸びて、ひっく、いつの間にかわたしも、っく、身長追い抜かれちゃって」

「最初に会った時からあなたの方が小さかったですよ」

「ぐすっ、かーさん嬉しいわ」

「すいませんお水下さーい」

「誰が母さんですか」

「ひぐ、ノボリさんもいつか女の子連れてわたしの元からいなくなって、し、しまうのね、ひっく」

「いなくなる予定はございません」

「あぁぁ立派になるのは嬉しいけど寂しいわぁぁぁぁ出来る事なら子供のままでいて欲し、ひぐ、いて欲しいけどっ、ひぃぃっく、そうもいかないわよねぇ、っく、ぐす」

「鬱陶しい……抱きつくなら頭にじゃなく背中とか胴とかにして頂けませんか…」

「なまえ、もっとお水飲もうね、はい」

「あ、ちょっとクダリ、わたくしの頭の上で水なんて飲ませないで下さいよこぼしたらどうするんですか」

「んっぐ、ん、ぐ、ぷは、ぐすっ…………………………」

「よしよし、ごめんねなまえ、大丈夫?」

「…………………きもち、わる、………ウェ」

「きゃあぁぁぁぁぁわたくしの上では吐かないで下さいましぃぃぃぃぃ」

「うわぁぁぁぁぁ嘘ォォォォトイレ!なまえトイレに、ハッこの場合どっちのトイレ行けばいいの!?」

「どっちでもいいです連れていきなさい!」

「………ぅぐ」

「いやぁぁぁぁここでは頼むから吐かないでね吐かないでねっていうかノボリも来てよ!僕1人になまえの世話させる気なの!」

「あーなんかわたくしちょっと脚痺れたみたいで立てないんでございますー」

「しょうもない嘘つかないでよ!ねぇお願い、僕らだけじゃなんか気まずいって言うか他の人に『やだあの人酔わせた女の子トイレに連れ込んでるわナニするのかしら』とか思われちゃう!」

「それ自意識過剰ですよクダリ」

「…いや…、わたし、ひとりでだいじょう……ぶなん、で……ゥェ」

「大丈夫じゃないよどう見ても」

「わかりましたよわたくしが連れて行きますよ、クダリは座ってなさい」

「え、何ノボリいいの?」

「ひとりでいけますって、ぅぐ、だいじょうぶですって、ぅぇ、だから手ぇ放して下さい、ってば」

「はいはいそういうことはひとりで立てる方が言うものですよ、ふらついてる人は黙ってわたくしに寄り掛かってなさい」

「なまえ顔まっさお!大丈夫だよノボリ吐かせるのうまいから。全部吐いておいでよ………プライドはだいぶ傷つくけどね!」

「いやマジいらな、い、っぇ、ほんと放し、て、くださいってば」

「奥までつっこんで差し上げますから、ね?」

「あははノボリー、冗談いいからはやく連れてったげて」

「ヒギィィィィやだやだ、吐くのひとりで、できる、からぁ」

「ではクダリ、わたくしたちナニしてきますので適当に飲んでてくださいまし」

「あれっ待ってノボリまさか酔ってないよね?大丈夫だよね!?吐かせてくるだけだよね!?」






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