三つ子の魂百まで








「本日はバトルサブウェイ」
「おなかへった……」
「ご乗車ありがとうございます」
「ねむい」
「わたくしサブウェイマスターの」
「わあおー、揺れる」
「ノボリと申します」
「あわ、おっとっと」
「さて次の目的地ですが」
「あぶっ!………いたい…な、なかないし……!」
「あの…お客さま?」
「え?ノボリさんそれわたしに向かってはなしてるんですか?」
「えっ?」
「えっ?」


「やだーノボリさんぼけちゃってー、わたしのかお忘れちゃったんですかー」ぶかぶかなシャツをワンピースのように羽織りあはははと大口開けて笑う幼女に、申し訳ないが全く心当たりがない。だがしかしそんな失礼なことは言えない。例え相手が推定5歳のこどもであってもである。


「あ……はは、いえ、覚えておりますよ。お久しぶりです、あいかわらず元気ですね…網棚の上は危ないのでおりましょうね。少し背が伸びましたか?」
「え?のびてないと思いますよ?おひさしぶりじゃないですし」
「え、あ、あ、そうでしたね、最近お会いしましたよね」
「さいきんっていうか毎日ですけど」
「へ……はは、あぁそうですよね、けれどほら、こうしておはなししたのは久しぶりですよね?」
「えー……なにいってるんですかノボリさん、さっきノボリさんがわたしにシングルトレインのあみだなてんけん、しとけっていったじゃないですかー」


つるつると網棚から銀色の手すりを伝って下りてきたその子どもは、床に着地するなりわたくしを見上げ、こう叫んだ。


「え……!?ノボリさんデカッ!?」






「く、クダリ!大変でございます!」

「うわーかたぐるま、たかーい」

「どうしたのノボリ!……あぁなんだ、迷子かぁ。どうしたの君、おかあさんとはぐれちゃった?」

「む、わたしはまいごじゃないです!」

「これなまえです!」

「……は?何言ってんの?」

「なまえですー」

「あ…そっかわかった、うんごめんね、きみはなまえちゃんっていうのか。よしよしオッケー、あめとか食べる?」

「あめ!……うわぁ、ミツハニーのはちみつドロップだー!おいしそう!」

「クダリ、クダリいいですか、落ち着いて聞くのですよ、この子はなまえです、あなたとわたくしの部下の」

「ノボリどうしたの?頭にピヨピヨパンチでもくらった?」

「ええ信じられないのは当然でしょうかく言うわたくしもなまえにわたくしの半裸写真をつきつけられるまで信じませんでしたから」

「え、なまえってばこんな子にまでノボリの写真ばらまいてるんだ、それは流石にとめた方がいいんじゃない?」

「ですから、」

「……ねぇねぇクダリさん、あめ、おわっちゃった」

「え?あぁ、じゃあアイスあげるよちょっと待っててね」

「わーい!アイスー!」

「なまえあなた何でそんなに落ち着いてるんです!?」

「ノボリさん、クダリさんにせつめーしてもむだだと思います、クダリさんげんじつしゅぎだから!ぶかがちぢんじゃったとかそんなひくしょんみたいなこといっても聞いてもらえないですよ」

「フィクションですね、えぇそりゃそうですけれど…ていうかフィクションって、と、当の本人がそれを言いますか!?」

「まぁまぁ、わたし気にしてませんから」

「気にして下さい!そのまま戻れなくなったらどうするんですか!」

「ノボリさんおひざのうえのってもいいですか?」

「へ、いいですけど……そうじゃないでしょう、聞きなさい!」

「う、ノボリさんこえでっかい!いいじゃないですかべつに、こどものままでも……しごとしなくてすむしー」

「じ、実家に帰るということですか?」

「なんかそのいいかたリコンした人みたいですね!」

「そう、ですよねそうなってしまいます、か……」

「え、かえんないですけど」

「だってどうするんですか、そんな小さななりで?」

「あ、そっかぁしごとなくなったらおかねもなくなっちゃう…んー、こまった」

「遅くなってごめんね、アイスもってきたよー!……あれ、仲良しだね2人とも、なまえちゃんノボリに抱っこしてもらってるの?いいねー」

「あ、いいことおもいついた」

「クダリ、クダリいいですか、」

「あのねあのねクダリお兄ちゃん、わたしね、まいごでおかあさんみつからないの……」

「え?ちょっとなまえ……ぅぐっ」

「ちょ、だまってて下さい……それでねっ、あのね、おかあさんみつかるまで駅にいてもいい?」

「ごほっ、ゲホ、ぅ、なまえ、打突面積が狭くなった分ひじ打ちの威力が上がってます、痛い、ゴホ」

「もちろんいいよ!おかあさんちゃんとみつけてあげるからね!」

「それでねそれでね、もしよるになってもまだみつからなかったら、……けいさつにわたしを押し付けてやっかいばらいするんじゃなく、クダリお兄ちゃんのおうちにつれてってくれる…?」

「なまえちゃん、そんな、僕ちゃんとおかあさん見つけてあげるってば!そんな不安そうな顔しないで!でもそうだね、もしもおかあさん見つからなかったらその時は僕のお家にご招待するよ!」

「ほんとう!?」

「ゴホッ、ちょっと待っ、」

「ほんとほんと、指きり!」

「やったー、ありがとうクダリお兄ちゃん!……ちょろい」

「ッいけません!いけませんいけません!」

「うわっびっくりした」

「ダメです!……なまえ、あなた何考えてるんですか……!」

「うっ……ノボリさ、…じゃなくてノボリお兄ちゃんがこわいよぉ、いたいよぉ、わぁぁん」

「ノボリちょっと何してるの!ちっちゃいこの肩そんなに力任せにつかんじゃダメでしょ!よしよしごめんねなまえちゃん、こわかったね、おいで」

「えっ違います、そんな力入れてないですと言うかなまえを下ろしなさいクダリ!」

「わーかたぐるまたかーい!………ハァハァシャンプーの良い匂いする……」

「わ、ちょっとなまえちゃん、もう、くすぐったいよー!」

「だっこだっこ、だっこがいい!」

「はいはい、おひめさま」

「ウホッさいこうのアングル……カメラ、あっ今ないんだ、しまった………クダリおにいちゃん、のど、ぼこってしてるねー?」

「ん?あ、のどぼとけ!おとこの大人にしかないの、だからなまえちゃんにはないで、しょ、っひッ!?」

「あっごめんねクダリお兄ちゃん触ったらだめだったかなえへへへへへ」

「あ、大丈夫、ごめんいきなりだったからびっくりしただ、ッん、あ、ちょ、」

「クダリお兄ちゃんお耳のよこのかみのけおもしろーい、あ、さらさらー!……うなじハァハァ……」

「なまえ!なまえクダリから離れなさい!」

「やぁだっ」

「なまえちゃん、ちょ、あの、ぼくちょっとその、お湯沸かしてくるからあとはノボリにかまって貰って、ッぁ、くれ、る?」

「チッ……ノボリお兄ちゃん、だっこぉ」

「はいはい」

「おいちょっとノボリさん、これだっこって言わないですよ、これはちゅうづりって言うんですよ、いたいけなこどもになにしてるの」

「そのいたいけなこどもとやらから発せられる不埒な雰囲気に身の危険を感じましたので」

「ぎゃ、ぎゃくたいだー!うわっちょっとこれ、あ、あう、あたまにちがのぼっちゃう!はなしてー!」

「はいはいすみません、ほら、もう。……おとなしくしてなさい」

「ひっかかったなー!…クダリお兄ちゃぁぁぁぁん!ノボリお兄ちゃんがいじめるー!」

「きゃー!?ちょっと、ひっ、あ、なまえちゃ、あ、脚撫でまわさないでー!!」









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