朝礼の時間になっても姿を見せなかったクダリを探していたら、管理室で寝ていると連絡を受けた。はて昨夜は帰宅しなかったのだろうか。熱心なことだ。それにしては管理室など彼の業務外の部屋にいるなど多少の違和感を覚えたが、ともかくそちらへ今行きますと無線で連絡を飛ばした。


「失礼します、クダリは」
「あ、ノボリさん…そこに」
「クダ……ナマエ?ナマエがこの時間に動作していないなど、何かあったのですか?メンテナンスでも?」
「いえ、我々は何も…でもちょっと妙ですね、どうやら記録のリロードをしてるみたいなんですけど」
「何が妙なのです?」
「ナマエのデータにしてはちょっとロード時間が長すぎるんです」
「………プログラムのバグでしょうか?」
「バグ…ではないと思います。正常に動作しているようですから…えーと、とにかくまずクダリさんを起こしてくれません?そこに居られると作業が…」
「あぁはい、すみません。クダリ、クダリ起きなさい。始業時間です」
「それにしてもクダリさんが管理室にいるなんてびっくりしましたよー。普段絶対ナマエに近づかないのに」
「ん…ねむ……もうちょっと…」
「そうですね、あれには困っていたのですが。まぁきっといつもの気まぐれだったのでしょう……クダリ!起きなさい!」
「あ、そろそろナマエも起きますね。99%……………100%、ロード完了です」
「ナマエ!」


いきなりガバリと起きあがったクダリに若干引きつつ掴んでいたコートの襟を離してやった。ナマエ、ナマエとニコニコしながら隣の椅子に近寄る彼を少し驚きながら見つめる。あぁ、ナマエが交換されてから見なくなったクダリの笑顔が戻っている。きっとこの子もようやくナマエを無くした痛手から立ち直ったのだろう。あれから日に日に濃さを増していた目元の隈も多少薄くなっているようだ。よかった。さては昨夜ここで二人は話し合いでもしたのだな、だからやっとクダリは彼女を気に入ったのだ。これでぎすぎすしていた状態が緩和されるだろうから、やっと仕事もスムーズに行くだろう。クダリの見る前でゆっくりとナマエの目が開く。モニターが反射してキラキラ輝く瞳を、クダリが魅せられたように覗き込んだ。「おかえり、ナマエ」「………あれー?目がある…あ、耳もあるー。なんで?」「よかった、失敗しなかった!ナマエ、僕わかる?」「はぁ…?クダリさん」「うん!えへ、ナマエ、ナマエ好き」「どういうことですかこれ…私何でここに居るの?」


何かおかしい、ナマエが、まるでこれでは、


「僕が君の記憶上書きして元に戻した!」


そんな


「え……じゃあまさかこのボディは新しい子の…?」


それでは


「別に悪い事してない。データ復元した、それだけ!」


ナマエは、


「待って下さいクダリさん……う、うわがきって事は、この子の復元は?」
「さぁ?」
「さぁって、」


そんな!


「……ぁ……ナマエ……?」


震える唇からこぼれたのはおおよそ自分の声とは思えないような頼りない掠れた物だった。ばくばくと心臓の音が耳にうるさい。びくりとこちらを見たナマエは、それで全てを悟ったように目を見開いた。






あなたは消えてしまったのか_







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