春のにどめまして、どうぞお手柔らかに








時々思い出す。ちょっと前にほんの少しの間だけお世話した、みっつのタマゴのこと。もう懐かしいと思いこそすれ、寂しさについ俯いてしまうようなことなどない。日々の業務の隙間の、ふとした瞬間に脳裏をよぎるのだ。あの小さな体は、今ごろ誰の横に立っているのだろうか。








クダリさんのおつかいでライモンジムまで行った帰りのこと。まだちょっぴり幼さの残る若いトレーナーが、ステーション前のベンチに座ってパートナーとサンドイッチを食べているのが見えた。


(………………あ。あれは)


「よーし、行こう!まずはマルチ!」もごもごと口を動かしながら紙袋をくしゃっと丸めて鞄に突っ込み立ちあがった1人と1匹を、くすぐったいような切ないような気持ちで見つめる。「きゅー!」そっか、君にもパートナーが出来たんだね。良かった。


「あ、もしもし。ノボリさーん」

『ナマエ?どうかしましたか?』

「あのね、多分今からそっちにすっごい強い挑戦者行きますよ」

『はい?』
「きっと強いです!ノボリさんたちのとこまで行きます!きっと!」

『はぁ』

「だからね、期待して待ってて下さい!」

『ほう?………ス、ボス、挑戦者で……あ、はいわかりました。ナマエ、行ってまいりますので切りますよ。あなたも早く戻っていらっしゃい』

「きっとすっごいバトルしてくれますからね!」

『それは楽しみです』







春のにどめまして、どうぞお手柔らかに








×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -