あ、ノボリさんだ。


ピンクや、オレンジや、いかがわしい印象をあたえる夜のネオンの中をふらふら歩く黒いロングコートを見つけた。サブウェイマスターの制服ではない、彼の私服である。どうしたんだろう。あの辺は、その、…ラブホが林立している一帯だ。そんな場所にひとりで行くのってちょっと、どうなのかな。誰かと待ち合わせしているのかな。


声をかけるべきか迷った末、ちょっとだけ尾行してみることにした。こんな所を歩くのは少し気が引けたけど、もし危ない目に遇いそうになったとしても、声をあげれば誰かしら助けてくれるだろう。離れてるけどノボリさんもいるし。平気だ。


20mほど遠い背中をこっそり追いかける。ノボリさんには申し訳ないけど、ちょっとわくわくしてしまう。


2分もしないうちに、ノボリさんは誰かと合流した。…のかな?女の人と何か話しこんでいる。彼女さん?いや、違う。断言できないけど、多分違う。だってあの人この間みた人と違うもの。あの堅物のノボリさんがそんなに早く恋人を入れ替えるはずがない。と思ってる間に、二人は腕を組んでビルに入っていってしまった!見上げれば目に痛いショッキングピンクのネオンサイン。…ラブホですね。


どうやら私が思ってたよりも、ノボリさんは恋多き人生を歩んでいるみたいだ。
上司の思わぬ一面をみて、私は内心にやりとした。面白いものも見れたし、もう帰ろう。くるりと踵を返す。




ばしり、目の前がスパークして、







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