謎のクリスマスプレゼント








ぴんぽん。間の抜けた音でインターホンが鳴った。誰だろう、宅配ピザやレンタル彼氏は頼んでないんだけどなぁ。ちなみに夜の9時である。


「はいー?どなたですか?」
「やぁこんにちは、僕はベイマッ……ベイマックダリ!君をケアするロボットです。イッシュサンタ教会から派遣されてきました。君宛のクリスマスプレゼントだよ」
「お帰りください」
「あけてくれないとご近所さんがけーさつへ通報する程度にここで騒ぐ」
「うわ迷惑!」


せっかくのお休みなのに何が悲しくて上司の顔なんか見なくちゃいけないんだろう、休暇中は引きこもって思う存分ぐだぐだしようと思ってたのに。ていうかメイクしてない!「クダリさんすいません5分待ってください」「5分?なんで?」「急に来られても迎える準備ができてるはずないじゃないですかー」「あぁそういう……部屋の掃除とか?わかった、3分間待ってあげる。40秒でしたくしな!」「どっちですか!なんで急にラピュタぶっこんできたんですか!」「あと30秒ー」「ギャッひどい」結局ドアを開けたのは7分後だったけど急に来たクダリさんが全面的に悪いと思う絶対。


「はぁぁ寒かった……やぁこんばんは、元気?10段階で表すとどれくらい?」
「はい?10段階?……クダリさんなに言ってるんですか?」
「違うよ僕はベイマックダリだよ」
「あ、わかった!あれですね、あのCMでやってるやつ。ポケウッドの最新作!ボスあの映画観に行ったんですか?面白かったですか?」
「違うよ、僕は君のボスじゃないよ。ベイマックダリだってば!」


ぷぅと頬を膨らませてかわいこぶっているクダリさんは、わたしの記憶によればそろそろ三十路の壁が見えてきかけている成人男性である。


「そうですか。何でもいいですけど玄関開けっ放しは寒いので中入ってもらっていいですか?」
「うん、いつ入れてくれるのかなって思ってた。寒いよ」


ぐすっと小さく鳴らしたクダリさんの鼻の頭は寒さで真っ赤だ。ここに来るまで随分かかったんだろうか、それとも色が白いから目立つだけなんだろうか。


「そんな着膨れして寒いんですか、何ですかその凶悪なほどに膨らんだダウンジャケットは……」
「違うよ、ダウンじゃないよ僕の本体だよ」
「わーフワフワ!うわっすごいフワフワ!これが今はやりのウルガモスダウン!?」


クダリさんから引っ剥がした柔らかいジャケットは、抱きしめるともふもふしていて触り心地が非常に良い。やっぱいいもの身に着けてらっしゃいますねサブウェイマスター様は……。羨ましい。むぎゅむぎゅ。


「うーん、スキャンした結果、君は頭がわるい!ウルガモスのハネは衣服には適さないでしょ流石に」
「えっいい歳してアニメ映画のごっこ遊びしてる人がなんかまともなこと言ってる怖い」
「頭を出してー」
「ウギャワワやめてください何で素振りしてるんですか、わたしは古いテレビとかじゃないですよ叩いても治りません!」


シュッシュッて手刀で空気を切っているクダリさんから頭をかばってしゃがみこんだら、ボスッと覆いかぶさられた、!重い!


「叩かないもーん。よし、よし。いいこだねー」
「ギャー髪がぐしゃぐしゃに……あっいい匂いする!なんかクダリさんお菓子みたいな匂いする!ギョエェくるしい」


いつもは洗剤かなにかの薄い香りだけ纏っているクダリさんなのに、今日はどこからかバニラみたいな香りがする。ぎゅうぎゅう頭を抱え込んでぷすぷす笑う(気配がする、顔は見えないけど)彼は、剥がそうにもなかなか離れてくれない。


「ひひ、『クダリさん、もう大丈夫ですよ』って言ったら離れる」
「エッまじですかじゃあ言いません、もったいないので!ふんすふんす」
「えー!?言ってよー言ってよ言ってよ」


わたしの頭をがっしり抱えていた腕がするりと離れ、こんどは胴に巻き付いた。さっきよりは動きやすいけど、ちょっと鬱陶しい。


「あーあー何かおなかすいたなーラーメン食べたいなー。クダリさんも食べますか?ラーメン」
「こんな時間にそんなもの食べたら太るよ」
「冬はいいんですよ冬は」


もう10時なのになーいけないんだーとか吐きながら、彼はわたしの背中にくっついたままずるずる引きずられている。


「ところで僕じつはケーキ買ってきてました。メリークリスマス」
「こんな時間に食べたら太るよとかどの口が言うんですかメリークリスマス!」


狙ったようにクリスマスの夜に来るとか嫌がらせじゃないのなんて思ったけど、ケーキが美味しかったから許すことにした。ヒウンの有名パティシエが出してる限定スイーツだ、売り切れ続出でめったに手に入らないって言うのに!運がいいなぁクダリさんは。




×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -