「パイナップルの果汁にはタンパク質分解酵素が含まれているので、一度果肉に火を通してからでないとゼラチンが固まらないのだ。だからパイナップルでゼリーを作るときは一旦加熱した果肉を使うのだぞ」


「ははぁ」


「加熱した卵、ゆで卵なんかは放っといても元の生状態には戻らないだろう?だがな、人間が火傷を治すのと同じように、皮下にゆで卵を埋めておくとゆっくりと生に戻っていくのだ」


「ひぃぃ」


「酸化チタンという言葉を聞いたことがあるか?あれに光が当たるとだな、光化学反応を起こして活性酵素が生じる。その活性酵素は様々な有機物を分解するのだ。つまり抗菌・脱臭・汚れ防止なんかができる」


「ふぅん」

「さらに水を全くはじかないという超親水性を持っているので酸化チタンをコートした鏡なんかはまったく曇らない」

「へー」


「ルビーとサファイアはともに酸化アルミニウム、アルミナの結晶だ。なのになぜ色が異なるかというと、それぞれに少量含まれる成分が違うからだ。ルビーにはクロムが、サファイアには鉄が含まれている」


「ほほう」


「……少しは化学に興味が沸いたか?」


「いやー、あんまり」


「ナマエよ…!頼むから少しは積極的に勉強してくれ!」


「だって…わっかんないんですよ!」


「ではせめて実験中に遊ぶのはやめようではないか!わたしが教職に就いてからお前が初めてだぞ、分液ろうとに水道水を入れて一滴ずつ延々垂らし続け遊ぶ生徒など!」


「じゃあ先生が今まで受け持ってた生徒たちはみんなユーモアがたりなかったんですね…まぁぽたぽたは流石に15分を過ぎると飽きましたけど」


「ならば何故まじめに参加せんのだ!」


「ひぃぃ…!う、うちの班にはNという優秀な理系男子がいるので…」


「人に頼ろうとするなッ!!!」


「失礼しますシャガ先生……失礼しました」


「うわぁぁぁぁぁぁんノボリせんせぇぇぇぇぇ!待って下さい!待って下さいぃぃ!!」


「いえいえいえいえいえわたくしの用事は後ででも一向に構わない物ですので改めて参ります!」


「ちょうど良かった、ノボリくん。まぁ入って座りたまえ」


「…お邪魔いたします」


「ははは逃げられると思うてか、ノボリ先生…!」


「コーヒーでも淹れよう」


「あーせんせー私もー!砂糖とミルクたっぷりで」


「…お前は紅茶でいいな」


「えぇー!」


「…あの、ナマエさん?あなたシャガ先生と何のお話を…」


「あ、えっとー…ぱ、パイナップルの話とかを」


「パイナップル!?それで何故怒鳴られるのですか?」


「違うだろうナマエ!ノボリくん、こやつがあまりにも化学から距離を置こうとするので身近にある化学を説明してやっていたのだよ」


「えー、全然身近じゃなかったですよ!」


「あぁ、なるほど」


「コーヒーだ。ナマエはほら紅茶。…こやつは本当に困った生徒で…実験中も遊んでばかりだし…。ノボリくんの授業も不真面目だったりしないかね?」


「ありがとうございます。…ナマエさんがですか?いいえ、わたくしの授業の限りではまじめに聞いてくださっています」


「紅茶紅茶!ありがとございます」

「…ナマエ、本当か?」


「やだなー、本当ですよシャガせんせーってば疑り深いな」


「信じがたい…」


「だって私ノボリせんせーは好きですもーん」


「っぐ!!」


「お前それは暗にわたしの事が嫌いだと言っておるのだな…!」


「だってシャガ先生怖いですよー!」


「それはお前が不真面目だからだ!」







化学教師とお話







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