「あれ…携帯ない」
「無くしたのかい?」
「あ、実験室じゃね?ナマエさっき天気予報見てたじゃん」
「そいうえばそうだった!…じゃあ置いてきちゃったんだー…。とってこなきゃ」
「一緒にいこうか?」
「いいよ、ひとりで平気!行ってくるね、バイバイまた明日!」
「おー、明日ー」
「失礼しまーす…あ、ノボリせんせー」
「おや…どうかなさいましたか?ええと、ナマエさん?」
「はい…え、名前覚えてくれたんですか!」
「ふふ、はい。流石にまだクラス全員とはいきませんが…あなたがたの名前ははさっきの片づけの時に」
「えへへー、ありがとうございますノボリ先生」
「いえ。ところでナマエさん、どうしてここに?」
「あ、そうでした!えっと、ちょっと忘れ物しちゃったみたいで…」
「忘れ物。これでしょうか」
「それですー!どこにありました?」
「実験台の上に置いてありましたよ。はい、どうぞ」
「すいません、ありがとうございました」
「いいえ。もう忘れてはいけませんよ」
「気をつけまーす。…ノボリ先生、」
「はい?」
「何か手伝いましょうか?」
「あとスタンドを片づけるだけですから、大丈夫ですよ」
「そうですか。…あ、じゃあ机拭いときますよ!」
「え、あ、ありがとうございます」
「雑巾…あ、あった」
「………」
「冷たー…。………ノボリせんせー」
「はい?」
「教育実習ってことは、将来は高校の先生になりたいんですか?」
「そうですね…まだはっきりとは決まっていませんが、多分そうなるだろうと思います」
「へえ、そうなんですか?未定?」
「ええ」
「先生は大学生、ですよね?」
「そうです。まだ学生ですから…先生と呼ばれるのは少し気恥かしいですね」
「あはは、恥ずかしいんですか?ノボリ先生ー。せーんせー。…先生どこの大学なんですか?」
「飛雲大ですよ」
「何年生ですか?」
「3年です」
「3年生!へー、じゃあもしも私が来年飛雲大に入ったりしたら、ノボリせんせーは先生じゃなくて先輩になるんですね!」
「ふ、そうですね…。飛雲を目指してらっしゃるのですか?」
「いや、違いますけど…だってあんな高いとこ私いけませんよー。もしもの話ですし……机拭き終わりました!」
「ありがとうございました。それで…飛雲ですが、偏差値の高い低いは学部によりますから、そんなに難易度としては難しい方ではないと思いますよ」
「うそだ…!…それに無理ですよ、私理数系だめですもん。国立は5教科いるじゃないですか」
「ナマエさんは文系なのでございますか?」
「う…理系ができないから文系です」
「そうですか…しかし数UBくらいまでなら今からでも遅くはないと思いますが」
「いいんですよーう。私はどこか私立入っていつかカントー留学とかするんですー」
「ほう。それは素敵な夢です」
「ノボリー!!ここにい…た……?ごめん、何か話し中だった?」
「クダリ先生だ!こんにちは!大丈夫です、世間話でしたから」
「あ、君。数学の時間ずっと寝てた子だ!」
「ナマエさん…」
「のわ、ち、違いますよノボリ先生!あれはー、机が愛しすぎてちょっとキスしてたっていうか?」
「へー、君ナマエっていうんだ!」
「あ、はい、そうです!よろしくお願いしますクダリ先生」
「うん、よろしくね!ていうかダメだよ授業中寝ちゃ、分かんなくなっちゃうよ」
「分かんないから眠くなっちゃうんですよー…で、寝るからまた分かんなくなっちゃう」
「負のスパイラルですね…」
「数学キライ?」
「き、嫌いってわけじゃ…」
「じゃあ僕の授業聞いて欲しいなー。分かりやすい説明できるように頑張るから!ね?」
「い…!」
「化学の方も、来週からはわたくしが授業させていただけることになりましたので、そちらも出来れば寝ずに聞いてくださいましね」
「…はーい」
「大丈夫!数学、わかればすっごく面白いよ!」
「化学もなかなかでございますよ」
「うへー」
「授業で分かんないことがあったらいつでも聞きにきていいからね!僕は職員室にいるから」
「わたくしは大抵化学準備室におりますからね」
「うー…ありがとうございます」
忘れ物