今日もまたノボリとナマエが仲良さげにきゃいきゃいと、またはいちゃいちゃと、くっつき合っているのを遠目で眺める。あの二人は本当に仲が良い。長く付き合っている男女特有の、倦怠感のような物もまるで見られない。いつ見てもまるで親友のようにお互いを認め合っていて、それがとても羨ましい。それでいて時折、うかつな場所でコトに及んでいるんだか何だか、そんなもんだから僕はいつもギョッとしてしまうのだった。


……うん、先日も休憩室で抱き合っているふたりとカチあってしまって、とてもに気まずい思いをした。もっと人目につかない所でやって欲しいよ。兄が職場恋愛にルーズで困るのだとカミツレちゃんのところへ相談にいったら、ウチの裏手でもこの間ナニかしてたわと恐ろしい報告を受けた。何をやってるんだあの馬鹿は。しかしそれなのに、兄は未だ僕へ彼女を紹介してくれないのだ。いや、確かにもうナマエとはとっくに既知だ(なんたって部下だ)し、今更改まって紹介も何も必要ないのかもしれないけど。でも僕としましては、ちゃんとナマエにノボリをよろしくお願いしますと言いたいんですよ。それだけなの。この間なんか、こしょこしょと肩を寄せて囁き合っているふたりに付き合っているのかと声をかけた駅員に対して、ゲラゲラ涙まじりに笑いながら「そんはずないでしょう!」「ないない、あっは、ないですよぉー!」と必死で誤魔化して手をパタパタさせていた。そのあまりの否定っぷりにあやうく納得しかけたけど、どう見たって彼らは付き合っている男女そのものの距離間でいるのだ。


「あなたが男だったらよかったんですよ」
「ノボリさんが女の子だったらよかったのになー」
「ふたりとも逆じゃ意味ないでしょう」
「ふふー!そうですね、全然意味ない」
「……あぁ、でも待って下さい。そしたら、普通でしたね。中身が今と同じで、それなら……普通でしたよね」
「あぁそっか、そうですね……」


ほら、またふたりで照れ隠しだろうか、わけのわからない事を言い合っている。変なふたり。



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