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まるで初めて女の子に恋でもしたみたいに居心地悪そうに、ノボリはうつむいて帽子のつばを引っ張る。それはノボリなりの照れ隠しだと僕は知っていた。ぴろぴろとデフォルトでない、ナマエがいつだったかにふざけて設定したままになってそのままの電話が古いアニメのテーマソングを電子音で吐き出す。ぴくりと肩を揺らして面倒くさそうに僕へ視線を投げたノボリに手をひらひらさせて僕は受話器を取った。そのあとのことは、あんまり思いだしたくないけど。ノボリはあれからまだ一度も泣いていない。白くて堅くて冷たくなったナマエと対面したとき、ノボリがそっと彼女の腹に手を滑らせたので、まさか死姦でもする気じゃないだろうなと一瞬ぞっとして少し焦ったけど、ノボリは優しくナマエのお腹の打撲痕を撫でただけで僕がした失礼な危惧は全くの杞憂だった。くしゃっと左手でナマエの、血で固まって所々ごわごわになってしまっている髪の毛を撫で梳かしながら、ノボリはずっと無表情だった。冷静なようで実はかなり混乱していた僕は、せめて列車事故だったら死に際に傍へいてあげることも出来たかもしれないのになぁ、なんて、場違いな事を考えていた。


これが処女厨な僕の兄弟のお話。面白くもなかったと思うけど。ノボリは今も時々白い薔薇の花を携えてふらっと出かけてっちゃう。多分、ナマエのお墓だと思う。冷たい石の下で骨になって眠ってる彼女はもうこの先ずうっと処女だし、絶対綺麗なカラダのままだから、ある意味いいんじゃないかな、処女厨にはぴったりでしょ。ノボリはもう女の子と遊ばないと思うよ。じゃあね、ばいばい。



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