一人もふたりも多分変わらないしね






夕食後甲斐甲斐しくも食器を洗い後片付けをしてくれた彼に、何故トイレを使うのにすらわざわざ許可を取るのかと聞いてみた。「だって、その……女性は、トイレに置いてあるのでしょう?その、生理用品が。そのようなところへ許可なしに入るのはどうかと思って……」などと絶妙に嫌な答えが返ってきた。そんなこと考えてトイレ入る人は普通いないと思う。残念なイケメンである。


「うーん、えーと、まぁ……あー、しばらくの間、あなたをこの家に置くことにするとして」
「感謝致します」
「ルールを決めましょうか」
「ルール?」


ルールというか、ただの約束ごとだ。


「いいですか、ここを自分の家と思ってくれてかまいませんからちゃんと電気つけたりトイレ行ったりすること!ごはんちゃんと食べること!えーと、お腹すいたけど冷蔵庫に何にもないって時は買い物行っていいですから!あ、テレビの横の引き出しの上から二番目に予備のお財布入ってるんでそっから出して下さい」
「え、あ、はい」
「えーとあとは何だろう、えー…………。とにかくいいですか!」
「はっはい!」


遠慮しすぎないように!こっちがむしろ気を使っちゃいますから!わたしの為にも変な遠慮しないでください!いいですか!ピシッと人差し指を立てて伝えたら、はいってふにゃりと笑って彼はわたしの伸ばした指にちょこんと彼の人差し指を触れさせた。こんな映画があったよね。ていうか思わず変な声が出そうになった。だってだって中身はともかく見た目はかなりハイレベルなんだもんこの人、そんなかわいいことされたらちょっとクるに決まってるでしょ!ウフフとはにかみながら嬉しそうに手をひっこめた彼にこっちもちょっと照れてしまった。いや、照れるというよりはむしろ、このほんわか感は、


「ペットを飼う気分、の、ような……」
「ハイ?」
「いえ何でも」


とりあえずおふろでも用意しましょうかーって立ちあがったら「あ、もう浴槽は洗ってあるのでお湯を張れば入れますよ」って微笑まれた。よくできたお手伝いさんのようである。ありがとうを伝えたら彼は嬉しそうに目を細めた。でっかいわんこみたいだ。ぱたぱた振られる、あるはずのない尻尾が見えた気がしたぞ。明日は彼のお茶碗とお箸と、あと洋服とか、買ってきてあげようかなぁ。休日はごろごろしようと思ってたけど、お買い物に費やすのも悪くない。いつまでもわたしのスウェットじゃかわいそうだもんね……サイズ明らかに合ってないし。大きめだと思ってたけど男の人にはやっぱり小さすぎる。シャツと、ズボンと、…………ちょ、これ、ぱぱぱぱ、ぱんつも用意しないといけないんじゃないのか、ひょっとして。自分のでもないぱんつ選ぶのか、ちょっとっていうかなんかすごく恥ずかしいな!押し黙って悶々と考え込むわたしの顔を、彼が不思議そうに覗き込んだ。あれーていうか昨日はこの人どうしたんだろうぱん、つ、……あれ、履きっぱとかそういう………。あ、でも昨日ドライヤー貸したし、お風呂場で洗ってその場で乾かしたとかかな、どうなんだろう。ちらりと視線を返したらニコッって頼りなげに微笑まれた。わ、わかんないけどとにかく買うものリストにぱんつは入れておかなきゃなるまい。


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