びっくりしたんですよ






さて、朝食を作ってもらったのでだいぶ今日は朝の時間にゆとりがあるわけで。


「えーと…あなたの家を探してもらうには、警察に相談するのが一番早いんだと思うんですけど」


コーヒーを飲みながら伺うように提案したら、彼は焦ったような打ちのめされたようながっかりしたような、総合してショックを受けたような表情を作った。だって、イケメンが家にいるのは別に何も異論はないんだけど、やっぱり家族が捜してたりしたら困るじゃないか。


「け、…いさつ、に行っても恐らく、わたくしの家は見つからないと…思います」
「どうしてそう思うんですか?」
「だって、それは……」


もじもじと彼が視線を落として自分自身の指と指を絡め手遊びする。意を決したように、ばっと顔を上げた。


「あの!信じて頂けないとは思いますが、わたくしどうやら異世界トリップとやらをしてしまったようなのです!」


ウワァーイタタタやっぱこの人電波がゆんゆんしてるよ。どうしよう。








曰く、彼のいた世界にいた生き物を、こちらでは全く見かけないだとか。曰く、彼の世界ではここよりももっと自然があふれていただとか。曰く、彼のいた世界では、こっちの世界がゲームになってる、だとか。あれちょっとまって今なんか変じゃなかった?


「……ゲーム?」
「はい!」


彼がおおまじめな顔してコクコク頷く。いやゲームなのはポケモンの方でしょ。自分設定まで盛り込んだ電波コスプレ厨二病患者だろうか。「わたくしのいた世界では、こちらの世界はゲームとして扱われて、といいますか、存在していたといいますか」今すぐにでも110番してポリスメンにこの脳内お花畑な妄想男を連れて行ってもらうべきだろうか。「昨日街を一日中歩き回って把握いたしました。自分があのゲームの世界に入り込んでしまったのだと」「ちなみにそのゲームって」「……ファンタジー」ファンタジーって顔してないけど。胡散臭げに顔を覗き込んだら、口もとを覆って一言、「…エロゲです」エロゲかよ。「な、なぜここが異世界と分かったかと申しますとですね、そのゲームオリジナルの架空動物が路地裏を歩いていたのです!」「え?どんなんですか?」「ご存じですか?ネコといいます」ご存じですとも。


だからですね、わたくし帰るところ、無いのでございます。お願いします、ここに置いて下さいましなまえさまぁぁぁぁ!土下座する勢いで足元にすがって来た電波な彼に、若干引いた。「ちなみになまえさまもゲーム中に登場するキャラクターの1人でございます。……わたくし何度お世話になったか分かりません」ぽっ、と頬を染めて上目づかいに見上げてくる彼に正直ドン引きした。本当であれ嘘であれ、そういうことは黙っておくべきだと思う。時計を見ると、もう普段なら家を出ている時間を5分ほど過ぎていた。




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