人前で連呼しないで下さい






「あ、なまえ!?久しぶ………おいコラこのビッチ」


近場のショッピングモールだし休日だし、知り合いに会わないといいなぁなんて思いながら来たけどこういう時に限って神様って意地悪いことをするものだとつくづく思う。


「ビッチ!?久しぶりに会った第一声がそれなの!わたしビッチじゃないし!」
「てめ、いま彼氏いないって言ってただろうがぁぁぁ…なんだあのイケメンは!」
「か、彼氏じゃないもんねー!ただ拾っただけだし、それに別に彼氏いたってビッチじゃないでしょ!」
「あの、なまえさま…?そちらの方は、」
「あ、彼氏さんどうもこんにちはぁ!私なまえの友人の…」
「ちょ、黙ってろ口閉じてろ!彼氏じゃないったら違うの!」
「…彼氏じゃないなら何だ!拾ったって何、逆ナンか!それとも同伴出勤か!ホストか!まさか兄ですぅなんて言うつもりじゃないでしょうねだったら紹介しなさいよ!」
「紹介しないわ!また今度説明しますんで本日はお引き取りくださー、い!ほらあんたの彼あっちで呆れて座ってるよ!てか彼氏いんのに紹介させようとすんな!」
「出会いはどこに転がってるかわかんないじゃない!」
「うっさいやらんわじゃあねまたね!」


ショップの袋を掲げたままボケラッと突っ立っていた彼の手をがっしり握って早足でその場から逃げた。「あー!裏切り者ぉー!」って背後からギリギリ叫び声ににならないくらいの怒声が聞こえたような気がするけどきかなかったことにした。


「あの…なまえさま…?さっきの方は、お友達ですか?よろしかったのですか?何ならわたくし暫くどこかで時間を潰して参りますし、お喋りしていらしても良かったのに」
「友達、ですけどぉー…いいんです!あなたが気にするようなことじゃないしー」
「しかし」
「…あっちだって彼氏と一緒だったし、わたしが割りこんだら迷惑でしょ。ね?」
「そ……、そうですね」


チラチラ後ろを振り返って、もう人ごみにまぎれちゃって見えないだろうに二人組の影を探しているらしい彼に向って悟し半分で吐き捨てるように言った。彼は半分だけ納得したような微妙な顔をして、脚だけは大人しくわたしに従ってついてきている。


「あ、あの!なまえさまは、び、……っち、なの、ですか?」
「え?何ですか?何て言いました?」
「だ、だから!ビッ」
「あ、フードコートある。喉乾いたんでちょっと寄ってきませんかー?あなたもそれ、手。いっこいっこはそんなに重くないだろうけど流石に疲れるでしょ?休んできましょ」
「え?えっと、わかりました」


聞こえてたけどね!流石に人がいっぱいいる中でビッチビッチ言われてはかなわない。例え気遣ったようなトーンであってもだ。ドリンクでも飲みながらビッチ疑惑を晴らしてやらなくてはならない。あの親愛なる馬鹿友達め、嫌なイメージ押しつけやがって!今度会うときは何か奢らせてやる。




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