お買い物に行こう!






「う……あの、あの、なまえさま!そっちではなく、わたくしその……こ、これで十分でございます、から!」


そういって彼が買い物かごにつっこんだのは3枚980円の大セール、白ブリーフだった。


「駄目です、イケメンブリーフは二次元だけに許されたギャグです。せめてトランクスかボクサーにしましょう。これとかこれとかこれとか」
「いっいいのでございますわたくしこれで結構です!大丈夫です!」
「何言ってんですかおばか!貧乏性!こっちのぱんつだってあっちのぱんつだってそのブリーフと値段100円しか違わないでしょうが!」
「ぱっぱんつなどと連呼しないで下さいまし…!」


ショッピングモールの一番奥、良心的なお値段が売りの衣料品売り場で声をひそめつつぎゃいぎゃい言い合いしているわたしたちは、はたから見たらどんな風に映っているのだろうか。少なくとも甘々な恋人同士には見えていないはずだ。だって物色してるものがぱんつだし。いやどうだろう、下着を一緒に選んでいるってのはむしろ恋人同士らしいかもしれない。だってぱんつだぜ。普通他人のぱんつ一緒に選んだりしないぜ。女子高生の放課後じゃあるまいし。


「うっ……わ、わたくしを辱めて何が楽しいのでございますかっ…こ、こんな、わたくし一刻も早く買い物を済ませてこのようなところから脱出したいのに…!」
「………あ、ねぇねぇこれどうですか、ふんどし。クラシックぱんつですって」
「いっ嫌です!嫌ですぅぅ……」


「なまえさまはちょっぴりいたずらっこでツンデレ気味の可愛らしい女性なのです…どうしてぱんつぱんつなどと連呼なさるのですか…こんなの羞恥プレイでございます…ちょっぴりイタズラっこの範囲を超えております……」ぶつぶつと泣きごとを漏らしながら彼はセールのワゴンを漁っている。別にセール品じゃなくたっていいのに。彼がその身にまとっているのは白のワイシャツと青いネクタイ、黒のスラックスに同じく黒の革靴である。今日が休日じゃなかったら仕事帰りのクールビズなサラリーマンみたいだ。


「何ぶつぶつ言ってるんです、ぱんつ買い終わったら他の服も揃えに行きますからね」
「代えのシャツがあれば十分でございます…下はいいです、ずっとこれを穿きます」
「うるせぇそんなのわたしが気を使うって言ってるでしょうが!おとなしく着せ替え人形になってなさいよ!さっき通った店に可愛いチェックのズボンあったんですよ行きましょうせめて試着してみましょう」
「スクール生でもあるまいしこの歳でチェックズボンは厳しいです!」
「さっきは白ブリーフとか言ってたくせに!大丈夫ですってあなたスタイル良いから!」


そっそんなことございません!なんてもじもじ赤くなりながら顔を覆ってしまった彼を尻目にぽいぽい彼が掴んでる買い物かごにぱんつ的な物を放りこんだ。何枚くらい用意しとけばいいんだろう、最低5枚くらいだろうか。旅行に行く時は日数+二、三枚って言われた気がするけど、旅行じゃないしすぐ洗濯機使えるしなぁ。ううむ、よくわからない。とりあえず彼が嫌がらないと思われるシンプルなデザインのぱんつを適当に、ぽいぽい。ううむ。あ、そうだ。


「ねぇねぇあなたはボクサー派なんですか?トランクス派?わたし男性のぱんつってそんくらいしか分かんないんですけど。」
「はいッ!?」
「(声裏返った…)いやだから、わたし今適当にぱんつ選んじゃってますけど、そういえば本人が穿いてるの参考にすればいいかなって」
「えっえっ、あのあの、ハッ!?いつのまにカゴの中へこんなにぱんつを…!?」
「ねぇちょっと、どんなぱんつ穿いてるんですかって」


言ってからあっこれ変質者みたいな質問だなって思ったら案の定彼もそう思ったみたいで、ただでさえ頬が薄赤く染まってたのにカッと耳まで真っ赤になってしまった。「……なまえさま、積極的です……ッ!ブラボー………!」あれ何かおかしな言葉が発せられた気がする。「……ナチュラルエロですね……フラグばりばりです…!」聞かなかったことにしよう。




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