幽霊列車





嬉しいです嬉しい嬉しい嬉しい嬉しいですあなたがこのわたくしを愛して愛し愛する愛を愛愛愛あい愛愛愛愛愛愛愛アイシテあいして愛して愛してくださる愛して下さるのですねああぁあぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああぁぁああぁぁそれはとても素敵な素敵素敵な素敵な素敵素敵素敵で素晴らしく素晴らしい素晴らしい素晴らしいことでございますねわたくし幸せで今にも今にも今にも今にも今にも壊れてしまいそうですこわれて壊れ壊れてしまいそうしまいそうなのですよ壊れてしまう思考が思考が思考が思考がまとまらなくてまとまらなくてまとまらなくて暴発してしまいそうです暴発暴発暴発暴発暴発暴発暴発暴発暴走暴走暴走暴走暴走してしまうから暴発してしまう暴走してしまうからあなたを傷つけてしまうかもしれないからあなたを守りたいのにあなたの背中に突き立てる爪はあなたを掻き抱く腕は力任せの酷い酷い酷い酷い酷い酷い酷い酷いひとりよがりで酷い酷い酷い酷い酷い酷い酷い酷く酷く酷く酷く無機質で冷たくて堅くてわたくしはあなたと生きていけなくて生きていけなくて生きていけないからあなたはきっとわたくしをいつか捨ててしまうからわたくしをいつか見限ってどこかへ行ってしまうからわたくしはきっとあなたにとって軽い軽い軽い軽い軽い軽くて小さな小さな小さな存在だから心に記憶にとどめておくにも小さすぎるからねぇきっとわたくしのことをことをことをことことことことをあなたはきっときっときっと忘れて忘れていつか忘れて忘れてしまうなら今ここであなたをいっそ殺して殺して殺して殺してしまいたいのに殺して殺して殺して壊して壊してでもそんなことできないからわたくしはあなたを守りたいから守りたくて守りたいのに守りたいと言ったこの腕は使いものになんかならなくてただあなたを抱きしめて抱きしめて抱きしめて体温を感じることなんかできない全て全て全てどうしてどうしてあなたはあなたはあなた、あなたを、


「なまえ?なまえ?なまえ?なまえ?なまえ?なまえ?なまえ?なまえ?なまえ?」
「なぁに?」
「なまえ、なまえ、なまえ、なまえ、なまえ、なまえ、なまえ、なまえ、なまえ、なまえ、なまえ、なまえ、なまえ、なまえ、なまえ、」
「うん、聞いてるよ」
「愛愛、愛して愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛してます愛して愛してる愛愛愛愛愛愛してますあなたを、わたくしはあなたを愛愛愛愛愛愛愛愛愛して」
「うん、わたしもだよ」


大好きだよ、と呟いた彼女の声が聴覚センサを通して中央思考回路へ届く前に感覚機能の80%がシャットダウンしてしまいましたが全身を網の目のように這っている圧力センサで彼女がわたくしの頭部を抱えて抱きしめてくれたのがわかりました幸せすぎてどうにかなってしまいそうです幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せなのにもう胴部から抜け落ちて線路に散らばってごみくずになってしまっているであろう燃料供給ポンプがまるで未だわたくしの胸に存在しているかのようにぎりぎりと痛んで痛んで痛んで辛い辛いのです中央思考回路の言語野も判断域ももはや正常に動作しない動作しない動作しないから動作しないのできっときっとわたくしは彼女に愛をあいをアイをiを愛を伝えているんだと思いますこれはきっと壊れる寸前のわたくしのバグバグバグバグバグバグバグで、バグで、けれどわたくしが願ってやまなかった願ってやまなかった願ってやまなかったあなたのあなたたちのあなたたちの心というものが少し理解できたような気もします理解できた気がしますあなたがわたくしにはなしていたごちゃ混ぜの感情と言うものはなんと煩雑で複雑で面倒でわずらわしくて愛しいのかなんて愛しい愛しい愛しいのか壊れる寸前で理解したって仕方ないのにただのバグバグバグバグで片づけて欲しくはないけれどもうこのバグはバグはバグはメンテナンスに出されて除去されることもない除去されないわたくしの歯車と一緒に捨ててわたくしをどうかこのままこの思考を持たせたまま終わらせてこのまま終わらせて下さいまし、ああそれはなんて素敵な、素敵な、


「なまえ………………」
「大丈夫だよ、また作ってあげるね」


きゅっと瞳孔が閉じて、がくりと彼の体から一気に力が抜ける。ごっそり必要な物が無くなった腹からは、空洞になったそこからぼたぼた燃料とぶちぎれたチューブだのコードだのが垂れ落ちていた。下半身など千切れ飛んでしまっていて、どこまで転がっていったのか見当もつかない。おおかた、そこらへんの車輪にからまっているかホームの下にはまりこんでしまっているかのどっちかだろうと思うけど。ノボリの両脇に腕を突っ込んで持ち上げる。重さなど感じなかったけれど、微かに腕の継ぎ目が軋む音がした。視界へ勝手に映り込む警告を無視して立ち上がる。わたしもそろそろメンテナンスしてほしいなぁ、ノボリさん。力を込めた右足からは、関節に入りこんだのだろうか微細な砂を噛む感触がして気持ち悪い。自動制御のトレインが、すっかりボロボロになって錆びた車輪を軋ませながらカナワタウンに向かってまた走り出す。座席屋根吊革などとうに腐食し朽ちてしまった古い古い筺体が動き続ける限りはわたしもここにいようと思う。



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