奥手なわけじゃあないけど





ふんだ。ふーんだ。別に、いいもんねー。クダリさんから電話来ないとか、ふん、ほんとどうでもいいし。友達と遊びに行ったりだとかひとりでお買い物行ったりだとか、そんな風にしてればクダリさんのことなんかぜーんぜん、思い出さないんだから。ふんだ。クダリさんなんかわたしに忘れられちゃえばいいんだから。そんでもっていつか寂しいよーって電話してくればいいんだから。そしたらわたしはすっごく普通の声音でもしもしクダリさんどうしたんですかって言ってやるんだから。ごろんと画面を見つめたまま寝がえりを打って、クダリさんの番号を表示させて、発信、は、しない。ふーんだ。なんだいなんだいクダリさんのばぁか。こーんなに健気に電話待ってるなまえちゃんを放っておくなんて犯罪ものなんだから。終身刑なんだから。わたしの部屋に。……うん、それはちょっといいかもしれない。あー、電話こないー、ばかばか、クダリさんのばーか。そんなんじゃ浮気しちゃうんだから。嘘だけどさ。ピロリッって着信音が響いたからびっくーん!って飛びあがって即ライブキャスター開いたのに、届いてたのはクダリさんからの着信じゃなくってビレッジサンドのクーポンメルマガだった。ちくしょう恥ずかしい。




ふんだ。ふーん、だ。別に、いいけどさぁ。なまえから連絡来ないとか、はは、どうでも良……くはないけど。みんなで飲みに行ったりだとかひとりで映画に行ったりだとか、そんな風にしてたらなまえのことなんかちょびっとしか思い出さないし。あ、ちょっと嘘。なまえなんか僕に放っとかれて寂しがればいい。そんでもってそのうちクダリさんのばかって電話とかしてくればいいんだ。そしたら僕はさも大人ぶった声でさみしかったの?って言うんだ。ベッドに放り投げたままのライブキャスターの画面は変わらずずっと黒いままで誰からの着信も表示してくれない。手を伸ばして電源を入れて、なまえの番号を表示させて、でも発信ボタンは押さない。なんでさなんでさ、なまえのばぁか。クダリくんはなまえ限定でさみしがりやだから、構ってくれなきゃ死んじゃうんだよ。……うん、僕は自分のことくん付けするようなキャラじゃなかったな。はぁ、なまえからは電話のひとつメールのひとつ、きやしない。そんなんじゃ僕、浮気しちゃうかもよ。バチュルとかにさ。ピロピロって着信音が響いたから盛大に飛びあがって画面がわれちゃうくらいの勢いでライブキャスターを開いたけど、届いてたのはノボリからの『おしょうゆ切れてましたっけ?』メールだった。すっごくドキドキしたのに!期待させといてそんなのって酷いよ。勝手に期待してたの僕だけど。





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