クラスでわいわいするのも嫌いじゃない。

けど何となくいつも私とノボリとクダリの3人で屋上でご飯を食べるのが日課になっている。
クラスと違って屋上は少ししか人がいない。普段はもう少し人がいるんだけどここのところめっきり寒くなってきて、わざわざ屋上でランチタイムを過ごす人は私達以外にはあまりいないようだ。

「ノボリ遅いねー」

だけど今日はノボリが呼び出しくらってるから今は私とクダリだけ。あ、呼び出しって悪い方じゃなくってね!お相手は1つ学年の下の女の子らしい。モテる男は辛いですねー。まあそれはクダリもか。

「そうだね」

「ぼくお腹減ったー」

隣で不貞腐れたような表情でぶーぶー文句言うクダリは手に持っているパンの袋を弄っている。

「先食べてよっか」

「うん!」

私の提案に嬉しそうに頷くクダリは年上のお姉様方に人気があるのでないかと思う。なんていうか、母性が擽られる、みたいな。ノボリが甘やかしちゃうのも仕方ないよね。
手に持っていたパンの袋を開いて中の蒸しパンに被りているクダリはまだ幼さが残る。
そんなことをぼんやり考えながらも自分もパンの袋を開きメロンパンをかじった。
 
「そういえばもうすぐテストだっけ?」

「3週間後。今回アデク先生が作る問題難しいらしいよ」

「へえー」

「私社会苦手なのに」

「この間の社会の点、ボロボロだったもんね」

「う、うるさい!クダリだって家庭科の点数あんまりよくなかった癖に」

「ぼくはいいの!だって服の繊維の種類とか別に知らなくっても問題ない」

「そんなこと言ったら社会の歴史なんて必要ないじゃん。私は今を生きてるんだから過去は振り返らない主義なんだよ」

「前にノボリにそれ否定されてたじゃん。過去の偉人がなんとかかんとかって」

「まあそうなんだけどさあ」


他愛もない会話を繰り返しながらも手元のパンは確実に消化していく。


「あ、飲み物買うの忘れてた」

「ぼくの苺オレ飲む?」

「飲む飲む、ありがと」


クダリの手から紙パックに入った苺オレを受け取りストローを使って飲む。ふんわり甘い香りと味が口腔に広がり、それから喉の奥へと流し込んでいった。

「あっ」

「何?苺オレありがと」

クダリに苺オレを手渡し、またメロンパンを頬張った。

「間接キスだね」

「げほっげほっ」

思わぬ爆弾投下に咳き込む。クダリ意味わかって言ってるの?否流石にこの歳だし間接キスの意味くらいわかるよね、うん。

「あはっ、ナマエ顔真っ赤」

けらけら笑うクダリ。そりゃあ真っ赤にもなるさ!

「ナマエ」

クダリはいきなり笑いを引っ込めて真剣な表情で私の頬に手を添える。

「く、クダリ…?」

次第にクダリと私の顔の距離は縮まっていきあと5cm、4cm、3…2…1…。


「何をしてらっしゃるのですか!」


唇同士が触れ合うギリギリのところでノボリの怒号がとぶ。その瞬間クダリと私の距離は一気に離れた。
鏡を見なくてもわかる。きっと今私はさっきよりも顔が真っ赤だ。頬が熱くてしょうがない。

「ノボリお帰りー、呼び出しどうだった?」

何もなかったかのようにいつもの調子で話すクダリ。

「クダリ!今はわたくしが質問しているのです、答えて下さいまし」

クダリとは対象にいつもより幾分か声のトーンが低いノボリ。明らかに機嫌が悪い。怒っている。

「ナマエ可愛かったからキスしようとしたんだ」

少し照れたように笑ってからまた言葉を続けた。

「それにぼくナマエの好きだから」

その言葉に私とノボリは固まった。
そろそろ授業始まっちゃう、先行くねと言って屋上を後にしたクダリを私とノボリはただただ見送った。

そして私は願った。
一刻でも早くこの頬の熱がひくことを。


―――

お題@間接ちゅー(近江さん)







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